意味をあたえる

文章としかいいようがない fktack@yahoo.co.jp

家のトイレのタイル

ウンコをしていたら携帯の電池が切れてしまい仕方なくドアにかけられたタオルの柄を眺めていた 花柄と言われる柄で青紫色の模様が描かれていて途中に竜に見える花や次元大介の横顔に見える花があった 100年くらい前に考えられた柄だろうか 一日でこんなにタオルの柄に注目するのはトイレの中くらいだ あとスリッパのイラストとか 「WAKU WAKU KUMA chan」とわざわざローマ字にしているのが悩ましい


実家のトイレは床がタイル張りだったことを思い出した 小さい円形のタイルが等間隔に並んでいて列が少しずつずれているため複数の円をつないでも正方形や長方形にできないのがやはり悩ましかった お風呂のゴムマットの裏側も同じ感じだった 水抜き用の長細い穴が横向に走っていてそれとフックにかけるための穴を組み合わせると人の顔に見えた それまで目の役割だった穴を鼻の穴にするとさまざまな表情を楽しめた

みどりのところ

子供を駅まで迎えに行くとき子供と妻は通称「みどりのところ」で待ち合わせるらしい 昨晩は急遽私が行くことになったら子供はすでに「みどりのところ」にいるらしい 妻に確認するが「しまむらの手前が」と要領を得ない そもそも何がみどりなのか緑色の目印を「みどりのところ」と呼んでいるのではないか ならばその緑を共有させてほしい その旨をもっと噛み砕いて伝えるが妻は「みどりのところ」のどこが緑なのか忘れてしまったのだ そんなことがあるのかと思うが目的地はイメージできても道順が説明できない的なものだろうか 究極の記号化というやつだろうか 緑という言葉を記憶すれば緑色のものはすべて消去して差し支えないということだ


今時の人ならスマホの地図でとかできるかもしれないが子はすでに待っていると言うしまどろっこしいので
「とりあえず行って探してみる」
と言い残し家を出た 結局得た情報はロータリーじゃないということだ 妻が子に「パパはみどりのところわかってないから工夫しなさいよ」と怒っている声を背中に聞きながら家を出た みどりのところはすぐにわかった 不動産屋の建物とその前の自動販売機が緑色なのだ 「みどりみどり」と唱えているとこんな大きなものも忘れてしまうのだ

ハンターハンター35巻感想

インターネットの感想でもあったように前巻の発売からだいぶたっていたので読んでいて登場人物がわからなくて読み直した 私は新巻を読み終わるのがそのぶん遅くなるから前から助走をつけて読むのは願ったりだった しかしいつになく登場人物が多く王子が14人出てくるうえにそれぞれに護衛がついてお互いの動向を探るために交換トレードみたいなことをやっている それぞれが思惑とか念能力だのを持っていてすべてを把握するのはかなり困難だ さながら「百年の孤独」でも読んでいるかのようだ そういえば今回の旅は「暗黒大陸」を目指していてそれはアフリカ大陸の南を上向きにした形にしているが一行はその先を目指しているとか言っている しかし俄然一国のお家騒動のほうが面白い

恵方を向くとコタツから足が出る

家に帰ると恵方巻きが薪のように皿の上に積み上げられていてそういえば中学のときの林間教室では薪係だったことを思い出しそのとき初めて薪とは草冠に新しいことを知った 夜の全校生徒が輪になって踊るコーナーで隅のバンガローの陰のところに男の幽霊が立っていると一部の女子がパニックを起こした林間教室だ 富士五湖のどこかのほとりのキャンプ場だった 部屋の壁に蚊取り線香がぶら下がっていて私はそのとき初めて蚊取り線香は縦向きでも使えることを知った 林間教室では以上のことくらいしかおぼえておらず一部他の記憶も混じっている気がする あと私の班はなかなか火がつかなかった


子供たちが恵方巻きを作ったらしくアプリで恵方を調べて無言でそちらへ向いて食べた それは薪のようであった ふざけて焼き芋を食べるときみたいに真ん中で折って
「ほっかほか~」
とやったらキュウリがつるんと飛び出した 折れなかったのである 恵方を向くとどうしても片足が出る形になってしまい寒くて不愉快だった 昼間は暖房が効きすぎてやはり不愉快で今年の冬は例年よりも体温の調節がうまくいかない 節分だからもう春だ 実家の近所に武家屋敷みたいな門の家があってその門の向こうに桃の木があって春になると花が咲いた

ブラジャーが蟹のように

わが家の女性下着専用の洗濯ピンチ? ていうんでしたっけ あのプラスチックや金属の円環に等間隔で洗濯ばさみがぶら下がっていてそこにズボンだのをはさんで乾かす装置--は洗濯ばさみの間隔が短いためブラジャーなどは真ん中で折り曲がる もっともその小さめの洗濯ピンチを「女性下着専用」としているのは私だけで妻などはどういうルールで運用しているのかは知らない 下着の干し方について最初は他の洗濯物にまぎらせて干すべしと習ったがまぎらせたぶんどうしてもあぶれてしまうハンカチだのが出てきてそれならもう下着は分けて干して外には出さないようにした 日の目を見られないブラジャーやパンツには申し訳ないが 結婚して家事の一部を担うようになったばかりのころは干し方にも独創性を求めてしまったが今はもう妻さえ納得するなら干し方などなんでも良いと思うようになったそのときは長いスポーツタオルやバスタオルで下着全体を囲むような干し方をした時期もあった


前置きが長くなったが普段は普段は縦向きに干していたブラジャーを横向きに干したら蟹のように見えた

砂利

残った雪を踏むのは楽しい 徒歩・車に限らず 車の場合は危ないから片輪のみ雪に乗っけている すると車体がガタガタと揺れた 懐かしい・と思った そういえば高校くらいまで家の前の道は砂利道だった 田舎なんだから当たり前だと思っていた すぐそばに国道が走っていてそれは小学生くらいのときに四車線になった 私の家は裏道沿いで対向車とすれ違うだけで難儀するくらいの狭さだった 水たまりが先なのか凸凹が先なのかとにかく雨が降ると段差が大きくなって次の雨はよりたくさんの雨水がたまるようになった 自転車に乗り始めのころは水たまりが一番の難関で補助輪が水たまりの縁に乗ると後輪が空回りして前に進まなくなる 水たまりは避けなければならないがそうすると真ん中の盛り上がりでバランスを崩すか端に逃げて側溝に落ちるかだった 私は頭から落ちたことがあり下手すれば死んでいたかもしれない 助けてくれたのは近所の主婦だ 立派な塀の家で私はよくそこによじ登った 今から考えれば不法侵入のとんでもない子供だがしかし大人からすればそんな時期はいっしゅんだったのかもしれない いつだったか子供が移動販売の車でお菓子を買ってあげたときにそこの店主がものすごい鼻毛だったことを書いたことがあるが今は学校が長くなったから行かない 行かないともう来なくなったんじゃないかと思う 長いのは過ぎ去る前だけだ 過ぎたことは短い


高校になると国道が立体交差になってそれにあわせて裏道が広がって舗装された まさかこんなマイナーな道が舗装されるなんて思わなかった とつぜんよそ行きの服を着せられたようなかんじだった 免許をとると同乗した父が
「ここは標識がないので必ず60キロ出すように」
と真顔で言った 60キロはスピーディーだった