意味をあたえる

文章としかいいようがない fktack@yahoo.co.jp

途中式(25)

私ははてなブログというサービスで「途中式」を連載しているがそれ以前も毎日何かしらを書いて投稿していた それがもう4年続いている 私はひょっとしたらこの「途中式」が終わったらそのままブログの投稿も終わるのではないかとふと思った この4年は割と書くことにフォーカスをあてていて私の書くことに対する考えに新鮮さをかんじる人も中にはいたようだが最近はあまり興味を失ってしまった だからといってこれまで書いてきたことすべてのことが今綴る一文字一文字に反映されなくなることはないが


仕事が休みだったので西野カナについて考えていた ぼんやりとベランダに干した洗濯物を眺めながら考えた 考えるうちに洗濯物どうしの隙間から見えるベランダの手すりとその間の空が反転して見えてきた そういうことはよくあるのである 私は西野カナについてはきちんと理論武装していつでもスマートに自分が西野カナの音楽を聞くことに耐えられないことを説明したいと思っている 私にとって西野カナこそJポップの象徴でありその前はオレンジレンジだった 西野カナオレンジレンジの象徴ということではなくオレンジレンジはかつてJポップの象徴だったという意味だ

途中式(24)

革靴を履いたら足が痛くなった 足というか股関節の外側が痛い 駅で弟に会った 弟のメカニズムというかホームでわき腹を小突かれて反射的に振り向きながらこれは意図的に小突いたものだ・誰だろうか・会社の知り合いか・などと思いを巡らせながら弟の顔を見ると一瞬は仕事関係の人に見える しかしすぐ次の瞬間は弟と認識し「おー」となるのである 唐突に来月子供が産まれることを告げられた その子供もあと20年か30年かしたら駅で誰かに小突かれて親類が一瞬他人に見える瞬間を味わうのだろうか 私は鴨下といっしょだった 私は弟に鴨下に名刺を渡すよう促した 鴨下は名刺を会社に置いてきたので代わりに私の名刺を渡した 私はいつも名刺をいくつか財布に入れているのである 鴨下は角がくしゃくしゃになるからいれないと言い訳をした 


それから電車が目的地についた 天気がぐんぐん悪くなった 改札前のガラスからロータリーを見下ろして振り返ったら待ち合わせの人たちがいた 予想よりも大勢いたが知らない人はいなかった それからロータリーに行ってザ・中国人みたいな名字の人を紹介され名刺を交換した 


暑いところと寒いところを行ったり来たりした というと謎々みたいだ

途中式(23)

結婚詐欺の弟の姉の逆向きの通勤路について新しい発見があった それはとちゅうの駅までの道のりをスマホのアプリで調べていて偶然発見したルートで今まで知らない道でアプリの更新があったと思う というか長い間通い慣れた道を改めて検索するということはまずなく何故調べたのかというと私は10月で別の工場に異動するからであった


その道は前から知っていて私はその道を「忍者の道」と読んでいた いつものルートの北側に平行向きに走っていてその道端には柵が立っていて遠目に柵を見ると光の反射が残像が走っているように見えるのである いつもの道は片道一車線だが一年に一度くらいは事故で大渋滞する とちゅうに自動車の整備学校があって事故を起こすのは決まってそこの生徒であった そのせいなのか朝はいつもツナギを着た講師が立って生徒の登校の様子を見守っている 私は生徒に後ろから煽られたことがあったが講師は見てみぬふりをしていた


忍者の道へ行くには橋をわたってすぐに左に折れて田んぼの中を突っ切っていく それなりにメジャーな道らしくとちゅうにダンプカーが何台か休憩しいることがある センターラインはないがそれなりに広い道だった 左に折れずに行くとクレーン車のレンタルの会社があってたくさんのクレーン車が停まっている道端がある 私はそれを見る度に首長竜を連想しそこをクレーンの墓場」と読んでいる 忍者だの首長竜だの私は詩人にでもなった気でいるのである

途中式(22)

弟が結婚詐欺にあった女の人はよく遅刻をする人であった もう10年くらい前の話だがそういうことも夢の中の出来事のようだ デスクの透明のマットの下に犬の写真を入れていた 「飼い犬ですか?」と訊くと「ちがう」という 隣町から橋を渡ってくるのである 
「橋が混むのだ」
といつも言っていた 私は当時の職場は家から車で5分のところにありあまり遅刻を咎めると「近いから遅刻しないで済むんだ」
と言われそうだから黙っていた 彼女の方が年上なのである 以前はT建設にいてそこではよく労災事故があったそうだ 私は下に見られていたのだ しかし彼女は仕事ができなかったので私はあまり引け目を持たずに済んだ


そんな彼女が渡った橋を今は毎朝逆向きに通っている 橋の名前を見ると彼女を思い出す いつも口述でしか聞かないからどんな漢字なのだろうと思いを巡らせたら割と簡単な字だった

途中式(21)

下関川が疎んじているのは淀川よりもパートの岡崎で岡崎は仕事は適当だしよく居眠りをする もう60歳を過ぎていて60歳を過ぎてから犬を飼い出したから無責任な人である 立川が「犬よりあんたの方が先に死ぬんじゃないか?」と指摘すると「そんなに長生きするんですか?」と目を丸くした 立川が「20年生きる場合もありますよ」というと「ペットショップの店員は12、3年て言ってた」と言い返す 寿命がスマホのバッテリーみたいな扱いである そういえば岡崎のスマホは画面が割れている 割れていても「イオンのスマホなんだ」と得意顔なのである 格安スマホだから時代を先取りしていると思っているのかもしれない 犬はどうなってしまうのか


立川も犬を飼っていて立川は「犬のくせに散歩を嫌がる」とこぼすがこれもなんか怪しい 勝手に嫌と決めつけただけではないか しかし岡崎とのやりとりを見ると責任感はありそうだ ちゃんと犬に疎い私には「犬」と話す 前の会社では「うちの子」と話す人がいた その犬がある日死んでしまって何日かお通夜みたいになった 私は一応気の毒がったが出入りしている事務機屋のおじさんが「たかが犬だろ?」と本人に言ってものすごい雰囲気になった 犬の性別はわからないが飼い主は女だ 弟が結婚詐欺にあったりと話題に事欠かない人であった

途中式(20)

昼間美容院へ行くと美容師から「淀川のこと書いてましたね」の言われた 以前にブログのURLを教えたが今でも読んでいるとは思わなかった もう何年か前の話でありその間に私のブログの話になることは一度もなかった 裁判所の近くの美容院である いつも音なしの映画を流しているのである これは客の趣味に合わせて例えば前にJリーグの試合を流したこともあったが私が興味なさそうだったのでそれっきりになった そのときは音があった それ以降は日本の映画を流していることが多くほぼ必ずそれには小林聡美がでている 小林聡美のセリフも聞こえないが音がないと小林聡美の性格の悪さが一層強調されるのである


それでも私はあまり映画を見ずに仕事のこと主に淀川のことを話しているのである 自衛隊に電話でクレームを入れたエピソードを紹介すると「サイコパスですね」と絶句していた 「私も以前そういう人と関わったことあります」と張り合って来ない人なので良かった 例えば職場だと下関川が割ともっとすごいエピソードをかぶせる傾向にありまた私の比喩の精度がイマイチなときもすぐに指摘してくる 私は下関川のおかげで人の話はつまらなくても最後まで聞こうという気になった 下関川はとても神経の細い人なので常に自信満々じゃないと気が滅入ってしまうのである 淀川のことも疎んじているのには明らかだがそれでも「あの人なりの考えがある」とあくまで平等に徹するのである

途中式(19)

緊急会議というのがあって営業本部長という人がおでましした 正確にはテレビ会議というやつでSF小説に出てくるみたいに画面には出席者の顔が並んでいる テレビ会議でいちばん気をつけなければならないのはマイクのオン/オフの切り替えでうっかりオンにしたまま画面の悪口を言っていると恨みを買いかねないので皆しぜんと無口になる しかも少し前にテレビ会議のシステムが替わったばかりでこのマイクの切り替えがわかりづらいアイコンで色がついているときがオンなのはわかるがアイコンの絵はマイクの絵に斜めの線が引かれているからついているからオフなのかオンなのか「わからないこともないこともない」みたいな状態でやっぱりしゃべれない 隣でひさしぶりに会議に出た三谷さんが「これは誰だ」と指差して聞いてくるから困った 
「もう秋だというのにノースリーブを着ているのは誰?」
と訊いてきてこの人はコンサルタントとしてやってきてそのまま課長になったY女史だった Y女史は相当の暑がりなのかそういえば春先に初めてお目にかかったときからノースリーブでしかし痩せていて年齢不詳なのである そのときはテレビじゃない本当の会議で私と鴨下は東京タワーのそばの駅で降りて本社という場所に行き予算に関する会議を受けた 会議は13時からだったので昼食を食べようということになりしかしオフィス街だったからなかなか食べるところが見つからずやっと見つけたカレー屋に入って私はカツカレーを食べ鴨下はメンチカレーを食べた メンチが好物なのだそうである その後カウンターでしばらく三谷さんと淀川の悪口を言い合ってお口直しにコーヒーを飲んでいたら危うく遅刻しそうになった