意味をあたえる

文章としかいいようがない fktack@yahoo.co.jp

友達をやめる

後輩が昨日から仕事を休んでいる。最初に朝電話があって、胃痛と吐き気がするということだったが、夕方また電話があって、そのときは今日の分の仕事が終わるか微妙なところで、みんなバタバタしており、全員が嫌な予感がした。
そうしたら胃潰瘍になったという報告で、最低2日は安静にしなければならないらしい。よって今日も忙しかった。土曜はレギュラーでも2人休むので、私の部署は全員で8人なので、職場内は随分スカスカになった。
胃潰瘍と聞くと、まず最初にストレスを思い浮かべる。早速私は先輩に「昨日この前の休みにマルイで買った服を来てこいとか言ったから、悩んじゃったんですかね?」と冗談を言った。彼はその前の日の休みに服を買い、ダイエットのために普段よりもワンサイズ小さいものを選んだという。そういうことは男の人でもするのか?さらにそれを簡単に他人に話すだろうか?彼はオープンな性格だ。いや、私が秘密主義すぎるのかもしれない。
今日になって、配送の人が昼過ぎに帰って来たときに、胃潰瘍のことを話すと「そんなにストレスの溜まる仕事だっけ?」とやはり私たちと同じような反応をした。私たちは、この仕事をとても楽だと思っている。その後で
「本当はいじる側のキャラなのに、みんなでいじっちゃったからかな」と荷物をおろしながら言った。荷物は昨日上司が言っていた数よりもかなり多かったので、私は気が重かった。また彼が休んでいるために仕事が遅れていて、担当のローテーションも変えなければならなかった。
「友達のあいだじゃ、いじる側なのかもしれませんね」
彼は部署の中では一番若い派遣社員で、とにかくせっかちな性格で、いちいち行動が愉快なので、一昨日もダンボール梱包をハサミを取ってくるのが面倒だからと、指を突き立てて開けようとしたりして、私は笑いすぎで涙をながした。
「友達でもいたんだよ、ある日「俺は本当はいじられる側じゃなくて、いじる側なんだよ」てキレたやつがいたんだよ」
「そんな人いたんですか? んで、胃潰瘍になった」
「いや、いきなり「友達、やめる」て言い出して」
「やめる、て笑」
「遊ばなくなった」
わざわざ宣言して友達をやめるなんて、随分律儀なやつだなあと、コンテナを引っ張りながら私は思った。段々と距離をとっていくのが一般的でスマートなやり方だろう。
しかし段々と距離をとるというのは、例えるなら太平洋の遠浅の海で入水自殺するようなもので、もしすんでのところで思いとどまっても、浜まで引き返すのにはあまりにも距離がありすぎて、結局途中で力尽きてしまう。逆にやめると宣言するのは、突然深みに入るようなもので、少し努力して、また運もあれば、案外簡単に助かり、こちらの方が希望があるのかもしれない。