意味をあたえる

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歯医者で流れる音楽

もう既に前に述べたかもしれないが忘れたが、先月ひと月くらいは私はiPhoneの中に「JPOP・ROCK」というプレイリストをつくり、それをシャッフルして聞いていたら、それは全部で780曲ほどあり、さすがに途中でうんざりしてきた。しかし誰に強制されたわけでもないのに、最後まで聞いてやろうという気になり最後まで聞いた。人というのは、何かと足かせとかハードルとか、そういうのが好きなのだ。

そして晴れて最後まで聞いたので、私は手始めにキースジャレットを聞いた。少し前に押入れの片付けをしていたら、昔コピーしてもらっていたCDが3枚出てきたからである。正確に言えば押入れから出てきたのは2枚で、1枚は元から車に積んであった。私は車に積んでなかった方から聞き始めた。それから一昨日回転寿司で食べた後に車に乗っていたら、妻に「歯医者で流れてそうなの聞いてる」と言われた。そうしたら娘にも「うちもこの前思った」と言われた。この前、というのは先週のことで、私は先週娘を学校まで送った。ちょうどテスト週間で部活動をやっていないので、学校の周りにはいつもよりたくさんの生徒がいて邪魔だった。

歯医者と言えばここ数年は一軒の歯医者しか言っていないので、歯医者と聞いて、私はその歯医者の待合の様子を思い浮かべた。果たしてそこで、キースジャレットのようなピアノがかかっていただろうか? 私がおぼえているのは、歯医者の待合には診察室へ行くドアの隣に(ドアは引き戸である)小さなテレビがかけられていて、そのテレビは音声はミュートされているが、いつもナショナルジオグラフィックみたいな映像を流している。ところがいつだったか、1回だけ世界の車窓からのような、ぶらり途中下車の旅のような番組が流れた。そこで紹介されていたのはおそらく中国で(音声がないからわからない)あまり裕福でない街の映像であり、そこは冬の朝でバラックに集まった労働者たちが、うどんのようなスイトンのような食べ物を、白い息と湯気をふうふうさせながら食べる映像が流れた。労働者の指はどれもごつごつして汚らしかった。それから場面が変わり、今度は川沿いの公園のような場所で、川は凍っていた。しかしそこでは大人も子供も活発に体を動かしており、鉄棒の前にいる中年の男は、上半身裸でインタビューに答えていた。(もちろん音声はないので何故裸なのかはわからない)

それからまた場面は変わり、街の入り口や俯瞰の映像が流れ、それからまた労働者のうどん、公園と続き、公園まできて私はこの映像はリピートされていることに気づいた。うどんの場面では気づかなかった。私は蕎麦よりもうどんの方が嫌いで、柔らかくてべしゃべしゃした食べ物、例えばおじやのようなものがあまり好きではなかったのである。