意味をあたえる

文章としかいいようがない fktack@yahoo.co.jp

台風の雲

帰り道、車を運転していたら、今日は台風がくるというので朝から雨マークであったが、昼前くらいには日がさしてきたので、少し迷ってから洗濯物を外に出した。H・Kくんが、
「雲のディフェンスをかいくぐって、太陽が抜けてきましたね!」
と言った。H・Kくんは大のサッカー好きで、今回のW杯ではアルゼンチンが優勝すると予想している、と以前言っていた。私はアルゼンチン優勝予想している人が、1番多いよね? と皮肉を言った。そして午後からすぐに雨がぱらついた。
夕方になり、トイレで新入社員のS・Yくんに出会ったので、「さぼってんの?」と軽口を叩いたら、今日はこれから客先に行って帰りがどうなるか心配だと言っていた。私はあまり心配すると心肺によくない、と言おうとしたが、若い人にそんなことを言ったら親父ギャグと取られるのも癪なのでやめた。実は心配と打とうとして、iPhoneが心肺と誤変換しただけの話だった。
帰り道の五差路を超えたところで、ふと西のほうに目をやると、だいぶ低いところに、ちぎれた、薄くて小さい雲がいくつも浮かんでいることに気づいた。なぜ低いところに浮かんだのがわかるのかと言うと、奥のほうの雲は、私の車についてくるような動きをするのに対して、手前の雲は少しずつ後ろへそれていく。視覚というのは、動きの差異で、立体を感じる、よ、う、だ。
私はこのような雲を以前にも見た気がするが、思い出せない。

それと、夕方くらいにゲップをしたら、昼に食べた唐揚げの臭いがこみ上げてきて、昨日もそんな感じで、昨日の弁当にも同じものが入っていたということだ。これは、衣にニンニクが入っているせいだ。この唐揚げは、肉が硬めで、最近の唐揚げにしては珍しい。母が運動会なんかで弁当に詰める唐揚げも、硬かったので懐かしい。母はまだ生きているし、たまに唐揚げもまだ食べられるが、母が運動会で唐揚げをあげることは多分もうない。

ところで、唐揚げはいつのまにこんなに人気メニューになったのだろうか? 私が子供の頃は、ただのおかずのひとつであるから、例えば好きな食べ物、という質問に「唐揚げ!」と答えるのは、なんだかそぐわない感じがした。ケーキとかステーキとか、そういうのが好きな食べ物としては自然だった。「お寿司」と答えた女の子がいて、私はお寿司というのもちょっと変な感じがしたが、頭に「お」をつけるくらいだし、そういえばこの子の顔はお寿司のようにも見える。結果的に私はこの子に、良い印象を持った。ところで、お寿司の女の子は二卵性の双子であり、もう1人男の子がいた。その双子が、ある日私の家へやってきたことがあった。私は当時は病弱で学校を休んでばかりだったので、宿題だか配り物を届けてくれたのである。私は病気だったから、玄関には出ないで、母が玄関でお礼を言った。私はその場に立ち会わなかったが、二人が玄関にいる様子がすぐに頭に浮かんだ。二人は特に私の近所に住んでいるわけではなかったので、家にやってくるのは珍しかった。だから二人で来たのかもしれない。確かひな祭りの頃の季節だったと思う。