意味をあたえる

文章としかいいようがない fktack@yahoo.co.jp

怖い話

前回、怖い話について書いたが、たしかに私は怖い話が好きだと書いたが、読んでいて長い間違和感があり、昨日になってふと気付いたが、話の主が幽霊を見た後、お母さんにそのことを話すと、お母さんは、
「幻でも見たんじゃない?」
と一蹴してしまうのである。私が親なら子供が「幽霊を見た」なんて部屋に飛び込んできて、血相を変えていたら、私だって怖くて仕方なくなってしまうだろう。家なんか売っぱらってしまおうと思うに違いない。なんせこの家は私が生まれ育った家でもなんでもないのだから。妻は愛着があるかもしれない。小学校か何かのときに、建て替えた家だと聞いたことがある。そのとき建て替える間は住むことができないので、駅の方のアパートに住んでいたらしいが、そこは壁が薄く、四六時中誰かに覗かれているような気がして仕方がなかったそうである。そして気にしすぎた妻は全身にじんましんができて、高熱が出て、入院する羽目になったそうだ。「入院」という言葉が出ると、途端に怪談ぽくなくなることに、今書きながら私は気付いた。

そうやって出来上がった家にしても、私からしたらかなり奇妙に見える箇所もあり、例えば随分な段差がついた部屋などもあり、欠陥住宅ではないかと思うこともある。しかしそれでも義母からしたら宝物のような家なのだ。

ふと宝物と書き、全然関係ないことを思い出したが、少し前にバーベキューの肉を自慢してくる子供の話を書いたが、彼は隣の家の子で、あるいは彼の弟かもしれないが、あるとき道端で、
「お母さんがいない」
と泣いていたことがある。私はそのときに、やはり私もお母さんが黙ってどこかへ出かけてしまったら、寂しくて泣いてしまうので彼を気の毒に思った。しかし彼の母親は顔の中の鼻が低く、豚のような容姿をしていたので、さらに私の母親では当然ないので、私は全然寂しくないことに気づいた。そして、私が寂しくも悲しくもないのに、彼は道端で泣き出してしまうくらい寂しがっていることが奇妙に思えてきた。彼は自分を可愛がって育ててくれた血縁者だから、そのぱっとしない容姿の女がいなくて寂しいのだろうな、と思った。