意味をあたえる

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トイレ

昨日というか今朝書いた記事では途中で話がそれてベンツのことが書きたくなったのでベンツのことを書いてしまったが、本筋としてはライブのことを書き、その時はたしか昼の部に出演した私たちは、社長に5000円でいいから夜の部に出ないかと誘われたのだ。それは、別に私たちが特別な演奏をしていたとかそういうのではなく、単に夜の出演者の数が少ないので、少しでも売り上げを出すために、社長がディスカウントして持ちかけてきたのだ。私たちは躊躇したが、社長は
「ライブ重ねれば上手くなるよ」
と言ってきて、結局やることになった。ちなみに私のバンドとは3人しかおらず、5000円は3では割り切れないので、そのあとの打ち上げとかで調整したのかもしれない。それか、私たちはその頃は頻繁にライブを行っていたので、多く払う人を毎回ローテーションさせていたのかもしれない。しかしちゃんと記録をとったりするわけではないので、順番はすぐにわからなくなった。
夜の部が終わり、社長は、
「やっぱり夜の方が演奏うまかったよ」
と声をかけてきて、その頃は私もまだまだ純粋なところもあったので、素直に喜んだ。社長とは、元プロのミュージシャンであり、その昔は和田アキ子のバックバンドもつとめたこともある人で、そういう人に褒められると気分が良かったが、今思うとその人は社長なのだから少しでも私たちから金を引き出そうとしている故の言動なのだから、私たちの方ももう少し狡くても良かったはずだ。音楽の話はまたするだろうが、とりあえずここまでにしておく。

タイトルの「トイレ」だが、私は昨日は実家へ行き、そうするとビールを飲まないかと言われ、飲み出すといいペースで飲めたので結構酔っ払ってしまった。しかし途中で母の拵えた混ぜご飯が食べたかったので、缶ビールの3缶目はハイボールであったが、それは500ml缶であり、とても飲めそうになかったので、妹にあげた。妹はそれにコーラを継ぎ足して飲んでいた。混ぜご飯には今日のやつにはもち米が少し混ぜてあるとのことで、
「ねちょねちょしてるな」
と母は言ったが、私はあまり気にならなかった。紅生姜をたくさんつけたので、味などほとんどわからなかったのだ。

そして帰り際に小便がしたくなったので、トイレに立ち寄り、トイレに入るのは随分久し振りで、それはなぜかと言うと実家のトイレは手洗い用の水が流れないので、洗面所まで手を洗いに行くのが面倒なので、できるだけトイレを利用しないようにしているからである。
ところで久し振りにトイレに入って思い出したが、トイレの水のたまりの底には、傷なのか汚れなのよか光の加減なのかわからないが、いつの頃なのか人の影のようなものが浮き出るようになっていた。細かく描写すると便器の底よりも明るい色の輪がふたつ縦に並んで一部が重なり、上の方の輪が小さく、したの方が大きくて半円なので、バストアップの人の姿に見えるのである。そして下の方の円が横長なのでずんぐりした体型に見え、上の輪が逆三角形に近い円なので七三分けの中年男性のように見え、完全に一致はしないものの、それは父親の姿にも似ていた。私は父親に向かってオシッコを毎日のようにかけていたことになるが、それは1階のトイレの話であり、2階のトイレには父はいない。ちなみに2階とは後から、私が中学2年の時に増築したので、2階が私の部屋となったので、あまり1階では用をたさなくなった。昨日初めて聞いた話だが、私の実家の1階部分は宮大工が建てたものであり、2階はそうではない。2階の方は腕の悪い大工で、しかし今の大工はプレカット加工だから腕の良し悪しはそれほど関係ない、部品の良し悪しである、となぜかあまり記憶にも残っていない大工のことをかばった。その2階の大工の方は、しかし確かにあまりいい職人ではなく、一度は2階を建てる時に、1階の居間の天井に穴を開けたこともあった。その大工と私が顔を合わせたのは一回きりであり、そのときに
「2階は子供部屋で、部屋ができるんだからたくさん勉強しろよ」
と言われた。私はそれまで自分の部屋がなくて、あることはあったが妹と共用で物置も兼ねて日当たりも悪かったから、常日頃から、自分の部屋が欲しいと言っていたのである。さらに父もこの家は増築できるようにできている、と1度ならず言っていたので、いずれはできるだろうと私は思っていた。父は私のために2階を増築したつもりになっており、それを大工にも話したのであろう。だから私は大工なんかに「勉強しろ」なんて言われて、恥ずかしかった。しかしその大工はやはり腕が悪いので、トイレにも人影は浮かばなかったのである。