意味をあたえる

文章としかいいようがない fktack@yahoo.co.jp

サカナクション

午後、仕事をしながら音楽を聴いた。サカナクションの「バッハの旋律を夜に聴いたせいです」がかかった。私は、「バッハの旋律を聴いたせいです」かもしれない、また聴く、は平仮名かもしれないと思い、調べたら合ってた。そのあとで、そのあとで、というのは昼間のほうですが、「僕と花」がかかった。両方とも私の好きな曲だった。私がプレイリストを組んでいるのだから、当たり前だった。しかし、私はプレイリストという発想が好きではなかった。好きな曲ばかりを選んで聴いてしまえば、同じアルバムでも再生回数がばらばらになってしまい、私はそれが気持ち悪いのだ。

サカナクションは私の中では好きなほうの音楽の部類に入るが、買ってまで聞く気にはなれないから、近所のレンタルショップで借りて聴いていた。そうしたら、春先にそのレンタルショップはリサイクルショップに変わり、それ以来音楽をレンタルしてきかなくなってしまった。サカナクションが今年に入って新しいアルバムを発表したのかは、だから知らない。

レンタルショップについては、同じユニフォームを着た店員がいつも2人か3人いて、坊主頭のメガネの男が店長だった。店長は私よりも若く見えた。カウンターの奥の見える位置の、注意事項の掲示の脇には、「お客様とのやくそく」というのがあって、その中に
「わたしたちは私語を一切いたしません」というのがあった。確かにカウンターの中は大変静かだった。しかし笑顔もなく、大変殺風景で、私はお金を払うときはいつも息がつまる思いがした。また、その店は24時間営業で、ゲームセンターも併設していたから、治安も良くなかった。隣が家電量販店で、そこの駐車場からよく警官が店内を覗き込んでいた。もしかしたら、警官はただサボっていただけなのかもしれない。

そこのゲームセンターの壁に、いくつか写真が貼られていて、そのうち1枚は志津の友達が写っていた。幼稚園くらいのときの写真だった。UFOキャッチャーで大きな景品を取ったとかで、ぬいぐるみを抱きかかえている写真だった。志津はその写真を見てとても羨ましがった。とても仲が良く、その子にはお兄ちゃんがいて、お兄ちゃんとセットで遊びに来ることもあった。おばあちゃんがいつも迎えに来て、おばあちゃんはいつも何を喋っているのかよくわからなかった。いつだったか、銀紙にくるまれた焼きそばをくれたことがあり、そんなもの絶対食いたくねーよとか思っていたが、食べてみると意外とおいしかった。おばあちゃんはいつだったか亡くなった。

その前後で、女の子は遊びにはこなくなり、義母がその子のことを嫌っているのがひとつの理由だったが、その原因はその子の母親だった。以前、話しかけたときに無視され、幼稚園のバスの待つ場所が一緒だったのが、勝手に別々に変えられてしまったのだ。母親は茶髪で痩せていて、とても歯が汚かった。私は会う度に歯のことがとても気になった。煙草をたくさん吸っているんだろうと思った。

私は今この文章を、硬い椅子の上であぐらをかきながら書いていて、そうしたら両方の肘を蚊にくわれてしまった。