意味をあたえる

文章としかいいようがない fktack@yahoo.co.jp

電話

昨日母から電話があったが私はネモちゃんとお風呂に入っていたから出られなかった。しかし実際はもうお風呂から出ていて、私たちは出る時に10秒間でコマ送りに変顔をする、同じ顔をしてはいけないという即席のルールで遊んでいた。ネモちゃんはどうか知らないが、私はたいして楽しくもなかったので、とっとと出て体を拭きたかった。体を拭くときにはどこから拭きますか? 私は頭です。ネモちゃんはまだ小学1年生だから私が拭いてやらなければ、髪が長いからぽたぽた垂れてしまう。

それでなんだかんだ時間は流れて上へ行って電話を見たら母から着信があり、私は、反射的に時計を見て、まだ10時前だったが、母は早いときは早く寝てしまうので、それは布団を敷いて、という本格的な就寝ではなく、テーブルの脇にごろんと横になって、寝る。父も、だいたい寝ている。しかしかけ直すと電話に出た。

「電話した?」
と第一声で言われて、今してるよ、と答えようかと思ったが、それは今思いついた返しで、そのときは私ももう夜もふけて家だったからだいぶリラックスしていたから、
「してないよ」
と普通に答えた。すると母はやっぱりね、と言い、今日の昼か夕方に、私から電話があった、と言うのだ。それは少し様子の変な私で、
「信之だけど、熱が38度3分でちゃってさ……☆¥%<〒×*……」
と言ってきたと言う。記号の部分は、わけのわからないことを言ったのではなく、私が忘れてしまったので記号で置き換えた。
「それで、なんなの?」
「わたしも、そう思ったから「それで、どうしたの?」てきいたら、わたしの言い方が冷たかったみたいで、がちゃんと切れた」
と言う。で、なんなの? という感じだ。母としては悪戯の類いだとすぐにわかったが、名前は合っているし、念のため私にかけてきた、という話だった。私は、改めてその電話の主が自分でないことを主張し、そして今現在もだいたい平熱であることを伝え、電話を切った。

なんなのだろう? 振り込め詐欺ならば、もう少し揺さぶるような設定を考えるだろうし、しかし、私の名前はきちんと名乗って、かえって不気味だ。

実は7年くらい前にも同じような電話がかかってきたことがあり、そのときは、
「信之だけど、仕事やめちゃってさ」
と泣きながら電話がかかってきたと言う。そのときは母も少し心配になって、しかし母は冷静な方だから、
「泣いたって仕方ないからとりあえず家に来い」
と言って切った。私はもうそのときは結婚して、親とは離れて暮らしており、しかし離れてと言っても1キロくらいしか離れていないので、私は車も所持しているから、5分とかからずに行ける。その時私が乗っていたのは紺のオペルだった。その時私は転職のこととかあまり考えてなかったので、一笑に付したが、数年後、転職に失敗して泣きを見るのである。しかし、母の前では泣かなかった。いや泣いたかもしれない。

それから思い出したが、私の家は昔から変な電話の多い家であり、しかし、私は今日これから古い知人と飲みに行き、実際今は向かっている途中で電車の中で、電車なら落ち着いて書けるから全部書けると思ったら、半分しか書けなかった。つづく。