意味をあたえる

文章としかいいようがない fktack@yahoo.co.jp

再放送

私がこれから書こうとしていることは、もうこのブログですでに書いたものかもしれないが、私は自分が書いたものをいちいち読み返したりしないし、同じなら同じでいいやと思っているから、べつに構わない。前に読んだ、と感じた人は、再放送だと思って読んでください。

しかし実のところそれは再放送ではない。それは例えばこういう風にまた一から書いているのだから、厳密に同じことを書くのは不可能だし、たとえ書いてあることの趣旨は同じであっても文体は異なり、また時間も置いてあるから、見方によれば前回よりも拡張しているのではないか、という意味ではなく、物理的に新しいことだ。なぜならそれは今朝の出来事だからだ。

今朝の出来事なのに、再放送、と言ってしまう意味も、私にはきちんと説明できない。ただ、なんとなく「以前も書いた」という感じがしただけの話で、しかし、確かに「これから書くことは以前も書いた」という強い予感(?)があった。

私はいつものように朝6時すぎに起き、隣のネモちゃんを起こしたが、今朝はどういうわけか先に下に降りてくれ、と言われ階段を降りたら義父がいて、ちょうどテレビは阪神のことをやっていて、巨人ファンの義父は不機嫌であった。野球に詳しくない人のために捕捉すると、数日前、巨人は阪神に4連敗して、日本シリーズ出場を逃したのだ。義父はまだ寝巻きで、その上義母もまだ起きていなかったから、今日義父の仕事は休みのようだ。しかし、それは最初から決まっていた休みではなく、外を見ると薄暗く小糠雨が降っていた。私は気まぐれで「小糠雨」なんて書いたが、まるっきり意味も知らずに使ったので、本当は全然違う雨なのかもしれない。そもそも雨でもないのかもしれない。しかし、外は雨が降っている。義父はシルバーサービスの派遣で交通整理のガードマンの仕事をしているから、雨だと休みになる。私なんかだと、雨で休みだと、ラッキー、と思うが、もちろん義父からしたら雨なら給料は出ないからアンラッキーなのかもしれないが、私は会社員で、しかし最近私の部署へ異動してきた50代後半の男性も、やはり仕事がないと元気がなくなる。仕事をしている方が楽だ、と言っていたこともある。その人は以前は営業をやっていて、あまり仕事をしないことで有名な人であった。有名、というと周りの人から教えられたみたいだが、私はその人自身から、
「今日は天気がいいから昼寝してくるわ」
と聞いたことがあって、確かにその日は天気が良くて、私は外で洗濯物を干しているところだった。物干し台は土台に水を入れて重石にして安定させるタイプだったがだいぶ古く、どこか穴があいているようで、いつの間にか水位が低くなって、気がつくと空になっていた。水を入れた次の日に空になる、とかではない。2週間か3週間か、あるいは2ヶ月とか、かなり長い時間をかけて水はなくなる。空になったからと言って、例えば風が強い日だとか、洗濯物を大量に干したとかしなければ、案外倒れずに保つのである。だから私も、それ以外の従業員も、だいたいどのくらいの周期で水がなくなるのか、最初は見極めるつもりでも、ついつい忘れてしまう。そして忘れた頃に外を通りかかった銀行帰りの事務員に、
「洗濯物が大変です」
と外から大声で言われてしまうのである。私の会社では事務員は3人いて、しかしなぜか物干し台が倒れたときに当たるのは同じ人で、その人はとても太っていた。私は最初その人がわざと倒しているんじゃないかと疑ったが、しかし本格的に考えると、確立的には1人の人がいつも当たる可能性は普通にあるだろうから、疑うのをよした。疑っている人の悪事を暴くよりも、そうでない人のを暴く方が、その人の罪は重くなるような気がする、というのもひとつの理由だった。

私はこのままこの事務員についての話に移りたいが、物干し台について、もう少し言いたいことがあり、その空になる重石についてだが、みんなはどこかに小さな穴があいているんじゃないかと、言っているが、私としては実のところ晴れた日に少しずつ蒸発しているんじゃないかと疑っている。事実その重石代わりのタンクには丸い塩ビの蓋が取り付けられていたが、私がこの会社に来た頃にはもうなくなっていたから、購入当時から、実は蓋などなかったのかもしれない。私は入社当時は当然下っ端だから、洗濯物を干す係りも多くやったが、実はさらに面倒くさい仕事もあったので、そっちの方を多くやった。いや違う。実はそのときは別の50代の人がいて、その人はみんなに嫌われていたから、その仕事はその人がやっていた。元はどこかの所長だったらしいが、あるとき脳出血で倒れ、なんとかリハビリして麻痺もなく職場復帰したが、もう所長は別の人がなっていて、席もなく、仕方なく私の部署へ回されてきたのだ。その人は私が半年経つ頃にはもう辞めてしまったが、辞めてから今の所長に
「あの人は障害者枠でとっていたから、給料は君たちの半分で済んだんだ」
と教えられ、私はそういうことは、もっと早くに教えてもらいたかったと思い、会議の後に先輩に、
「教えてもらいたかったですよね」
と言ったらどっちでもいいよ、みたいな反応をされた。