意味をあたえる

文章としかいいようがない fktack@yahoo.co.jp

全返し縫い、半返し縫い

家庭科の授業でそんなのがあった気がする。小学六年のとき、木曜の三時間目四時間目が家庭科の授業だった。裁縫の授業で、雑巾だかを縫い、しかし私はなかなか針に糸を通せず、一時間つぶした。担任は特に怒らなかった。私は、そのときはもうふざけ半分であり、つまりふざけ四分の一とかならもうとっくに糸を通せたはずだった。ふざけていたから、むしろ糸を通せない自分が、特別な存在であるかのように振る舞った。担任は笑っていた。女の教師である。五年の時の東京見学の際、彼女は黄色いポロシャツを着用した。国会議事堂をバックにして、我々は写真をとった。私の記憶に黄色のポロシャツは刻み込まれた。そのとき私は、比較的背が高かったから後列で、
「後列の人はしゃがんで」
と言われたので膝に手を置いて中腰になった。

あとで写真を見ると、私の頭は前列の女子の間にめり込んでいた。おかげで女子の頭も傾いている。私以外の男子はそこまで頭を下げてはいない。私は、一体国会議事堂を、どのくらい小さい建物と思っていたのだろうか。

頭の傾いた女子は、眼鏡をかけていて、バスケット少年団に所属している。二学期に髪を切った。体育でバスケットをやることになると同じ班になり、私は最初にチェストパスを教えてもらった。
「そうそう、うまいよ」
と褒めてくれた。彼女の家は、交差点の角にあったから、車で通りかかるときによく見かけた。家の前の道は一方通行で、たまに警察が隠れていた。


昨夜にとつぜん叔母が亡くなった。叔母は夫を数年前に亡くし、それから娘夫婦と二世帯で暮らしていた。今は二階部分の床を張り替えている。叔母は胸が苦しくなったとき、夫が息を引き取ったところとは別の病院に連れてってほしいと頼んだ。しかし車の中で意識をなくし、娘が救急車を呼んだら、救急車はその病院へ向かった。