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意味をあたえる

文章としかいいようがない fktack@yahoo.co.jp

ちさき手

私は小さい手々が好きなのです
幼い頃は妹の手が好きでした
細い指たちが 私の いっぽんの指に巻き付くのが心地いい
しかし妹はすぐにおおきくなって 私はそれが不満でした

次に弟の手が好きになりました
弟の手は長い間私のお気に入りでした
裏の家の鶏小屋のまえで 弟を抱きしめました
鶏小屋は 物置を兼ねていました
そこに住むおじいさんは床屋をやっていて 行くといつも大相撲を見ていた
ババアはいつも口うるさい
弟は私の手を力強く握りしめた
私はとても満足だった
弟とはいつしか手をつながなくなったが ゲームなどはよくした
夜中に「大魔界村」を全クリした

しばらくして子供ができて 私は子供の手に夢中になった
20代が終わりにちかづいて 私はあまり子供に関心を持たなくなった
夏に軽井沢に泊まった
私はピンク色のTシャツを着て 車を降りた ピンクの上に 白い 柄のシャツを羽織っていた
下の子は ベビーカーに乗っている 離乳食が充実している宿を選んだのだ
部屋から階段までの遠い宿だった
私の記憶はそこで途切れる

下の子は 生まれつき手の大きい子だった
妻が 「手が大きくて びっくりした」
と言った 母も「大きいよね」と同意した 妻が言い出さない限りは言わない といった感じの言い方だった
下の子は 黄疸が出て しばらく帰れなかった
妻だけが病院から出てきて ふたりで空のベビーベッドを眺めた ベッドの縁に 名前を書いたA4の紙を貼り それが風でめくれた 
夏の終わりに生まれたので 「汗疹にならなくていていいやね」と言われた
やがて帰ってきたので 存分に手を握った
私には 特に大きいとは感じられなかった また 構わないとも思った

生後二週間の甥の手は とても冷たい
私が抱いても ちっとも泣き止まない

私は この詩のタイトルを「子離れ」にしようと思う