意味をあたえる

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私生活を聞かれるのは嫌だけど

ちょっと前に読んだ、2ちゃんねるのまとめの記事の感想から、この話を始めようと思った。しかし、案の定見つからなかった。おぼえている限りで記すと、とある会社勤めの人が、この人はそれなりの立場の人で、部下がいるらしいが、その部下が次々に辞めてしまう、しかも鬱などになって、という内容だった。書き込みを読んでいくと、この人なりに悩んでいそうである。しかしこの人は、(仮にS氏とする)自分が部下だった頃の経験、また昨今の風潮から部下のプライバシーに立ち入ることを良しとせず、部下とのやりとりを、仕事に関する必要最低限にしたそうだ。

これを読んで、私も、この人の下では働きたくないなあと思った。要するにそれは、コミュニケーションのためなら、ある程度のプライバシーの侵害は許容するという意味である。

私は今までいくつかの企業その他に勤めてきたが、振り返ってみて、比較的ストレスなく働けたのは、コミュニケーションのよく取れた職場であった。「コミュニケーション」を私なりに解釈すると、自分の感情や言いたいことを、表に出せるか、という意味である。私の場合は、先輩後輩関係なく、冗談を言える環境である。今の会社でも、今日も後輩が、
「車を大事にする人は、女を大事にするって言いますよね。車をよく変える人は、女もよく変える」
と言ったのを受けて、私は
「北尾さんはどうですか? 車はけっこう変えてそうですけど......」
なんて話を振った。北尾さんは主任である。睨まれた。

一方で、友達じゃないんだから、仕事以外のことは一切話したくないという人もいる。最初の掲示板でも、
「ぜひこういう人の下で働きたい」
という書き込みが散見された。それを読んで私は
「本当かよ」
と思った。上記の上司は、仕事に関して、問題がない限り自分からは口は出さない、と言っていた。営業職なので、ノルマさえクリアすれば、机が散らかっていたりしても、注意はしない。もちろん部下の方から質問されればそれには答えるし、相談にも乗る。

一見理想の上司に見えるが、私には無理だ。私はどちらかと言えば、人の顔色をうかがう性格だからである。だから、上司や先輩が忙しそうにしていたり、不機嫌そうにしていると、質問したいことがあっても引っ込めて、自分で解決しようとする。どうしても無理だと思ったり、暇そうならなんとか行けるが、それでも
「なんでこんなこと聞くの?」
と言われそうで、怖い。理想は、相手がこちらの様子を見て、声をかけてきてくれることだ。

そういうストレスを少しでも軽減するために、「仲良くする」というのはとても重要なことである。そのために私生活を根ほり葉ほり訊かれるのは耐えられない、というのは私も同じだから、結論としては、そういうバランスだよね、というところに落ち着くが、例えば、
「趣味はなに?」
「休みの日は家でなにしてるの?」
などは、天気の話の次の次くらいには出てくる話題なので、あらかじめ答えを用意すれば、私生活への侵入はいくらでも防げる。聞いてるほうは、本気でそういうことが知りたくて質問するのではなく、単に間が持たないから聞く(つまり会話の引き出しが少ない)のだから、いい加減に答えても、何の問題もないのである。

ちなみに私は、最初の職場で趣味をきかれ、
「ジャズやフュージョンをよく聴きます」
と正直に答えたら、イヤミなやつに思われ、しかし実際ジャズが好きな人がひとりいたものの、聴いているアルバムが一枚もかぶらなかったので、なんの役にも立たなかった。