意味をあたえる

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ホワイト企業になるのは大変だ

今朝所長がやってきて、
「おはようございます!!」
と挨拶をした。私の部署には上司も含めて朝から元気のいい人なんていないから、鬱陶しかった。その前に朝礼をやっていて上司が今日の段取りを説明したが、傍らにいた所長は何度も顔をしかめ、「ん? 聞こえねーよ」みたいなポーズをした。

所長がなにを言いにきたのかというと、最近私の勤めている会社が、残業にとてもシビアになったので、残業するなという話だった。私のいる部署は元からめったに残業など発生しないので、あまり関係なかったが、少し打刻が早すぎるということを注意された。出勤の打刻で、タイムカードである。打刻が早すぎるのは私のことではなかった。S氏であった。S氏はいつも8時30分には来ている。調子がいいと、20分に来ることもあるらしい。

「機械は時刻だけを見て、仕事をしている・いないを見るから」
所長はそう言ってS氏をたしなめた。私は(理にかなっている)と思ったが、それは私がS氏を嫌っているためかもしれない。Sはもはや喧嘩上等といった態度で、
「要は、なんとかなんとか(なんて言ってたか忘れた。理にかなってないこと)にしろってことっすよね!?」
とつっかかった。私は今の会社に来たとき、S氏に「○○っす」て口のききかたをして、二回くらい怒られた。私は個人的に、将来S氏が何かの間違いで私の上司にでもなったら、面倒だと思っているので、所長につっかかってもらうのは、大歓迎なのであった。

S氏の家は、会社から車で一時間くらい離れており、「遅刻しないため」に、早めに出社している。だから、それを咎められるのはおかしいと言いたいのだ。私はそれはとんだお門違いだと思った。私たちは、朝9時に仕事を始めろと言われているだけだ。それをどう解釈するのかは勝手だが、どう解釈したって自己満足でしかない。遅刻をしたら周りに迷惑をかけるから、という理屈なのだろうが、例えば交通機関の乱れといった不可抗力での遅刻は、親が死んで会社を一週間休む、というのと同じ類で、最初から織り込まれた迷惑として捉えるべきである。もし、突発的に一人休んだだけで業務が致命的に回らなくなるというのなら、そこは真生のブラック企業だろうが、その人が「自分は代替のきかない人材」と単に勘違いしていることも多い。

私はここではサービス残業に限定して「ブラック企業」と言っているが、社員のほうが自らサービスしてブラックにしてしまっているケースも結構あると思う。私は最近残業することにすっかり慣れてしまった人と仕事をしているが、そういう人は、最初から残業ありきでスケジュールを組む。明日でいい仕事を「すっきりしないから」といって、その日にやろうとする。せかせかするのを嫌って日中だらける。確かにきりのいいところまでやるほうが、精神衛生的にはいいのかもしれない。そう考えると、「時間第一」で仕事を進めるのには、一種のセンスが要るのかもしれない。

そうは言っても、必死でやってもどうしても仕事が終わらない、という人はまずは上の人に働きかけることをお勧めする。現場のことは、現場の人にしかわからない、という言葉があるから、本当にわかっていない可能性もある。私の部署の人は、誰かが辞めると上長の上長まで働きかけて次の人をとってもらった。あまりこちらからなんとかしてしまうと、会社のほうが「なんとかなるじゃん」と勘違いするので、あまり普段から全力で仕事をしないほうがいい。

働きかけても一蹴された、上司が怖くて言い出せない、という人は、仕事の手を抜こう。べつにギャグで言っているのではなく、直接利益に結びつかない仕事を減らし、結果には大して影響しない出来不出来を、下げていくのである。企業が、業績不振になるとコストカットや業務縮小をするように、こちらも一切の無駄を省いていくのである。

そうした工夫がうまくいかなかったり、上司に手を抜いていると怒られたら、そこで初めて紛れもないブラック企業、と認定できるのである。ブラック企業を根絶させるには、企業側の改善や法整備も必要だが、働く側も意識を変えて、自ら「ブラック人材」にならないように注意する必要がある。サラリーマンの一番の目的とは、効率良く会社の利益を上げていく、ではなく、効率良くサラリーを回収していく、であり、前者は後者のための一手段でしかないことを、忘れないようにしたい。