意味をあたえる

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限界をこえて残業した人のイメージ

少し前に「私は1ヶ月で○○時間残業しました」という記事を立て続けに見かけ、しかもそれは一ページにおさまっていたから、異様な感じがした。私はそれらのどれについても中身を見ずに済んだ。大変わかりやすいタイトルだったからである。結局これらは、「昨日はなん時間しか寝てねーよ自慢」「全然勉強してねーよ自慢」と同じ類ではないか、と思った。

中身を読んでいないから自信を持って言えないが、これらの記事の内容は、たくさん残業したばっかりに、こんな悪いことが起きました、こういうダメージを受けました、病気になりました、というふうに締められるのではないだろうか。違うかもしれない。しかしそれならば、「どうせそうだろ」と思わせないタイトルの付け方を、もっと工夫してもらいたい。例えば
「残業100時間で肩こりも便通もすっきり! (※個人差あり」とか、
「残業1000時間でついに悟りの境地へ。私が社会で釈迦と重なった瞬間......」
とかだったら、読もうという気になったかもしれない。読まなくても
「いよいよ異常な世の中になったか」
と、ある意味前向きな気持ちを持っただろう。「前向き」とは、表現にかんしての前向きで、私は概ね奇抜なものが好きなのである。

この前深夜のクレイジージャーニーという番組を私は割と熱心に見ていて、しかしそれは比較的最近のことで、だからこの前総集編をやっていたのだが、私が見たことのないものの方が多くて楽しめた。総集の中に、アフリカのとある民族のどれだけ太れるか祭、を取材したものがあり、そのルールが牛の乳と牛の血しか飲んではいけないことになっていて、男たちは一日に何リットルものそれらを飲み干していく。祭は数日続くのである。それで、いくらアフリカ人であっても体の構造は私たちと同じだから想像は容易いが、飲み過ぎると気持ち悪くなってうずくまり、限界を越えると吐くしかない。腹をぱんぱんに膨らませた黒人が両手を太ももの間に突っ込み、なにやらあやしげな雰囲気を漂わせはじめると、ついに、
「どばー」
と盛大に血を吐き出す。牛乳はどこに行ったんだ、というくらいのきれいな赤である。見ている私も「おえー」という気分だが、同時におかしくて仕方がない。まさに「血反吐を吐く」と呼ぶにふさわしい映像だったからである。ダムの放流なみの勢いがあった。バトルマンガでは技を食らった相手が、そうやって血反吐を吐くことはたまに見かけたが、実際だったらかなり危険な状態であることは間違いない。私は残業100時間したら脳内イメージとしてはこんな感じなんだろうな、も思ったりした。