意味をあたえる

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縦割り洗脳

今朝、元光ゲンジのメンバーの諸星さんに殺虫剤をかけられる夢を見た。その日私はゴキブリを三匹見つけ、そこがたまたま水場だったので、ホースから水を出し、先っぽのダイヤルを「JET」にして引き金を引き、三匹をコーナーに追い詰めた。ジェットの勢いは凄まじいので私はゴキブリの身体を粉砕できたと満足したが、水勢を弱めるとなおうごめいているので私は弱った。それならば、排水口に流してしまおうと再び引き金に力を入れ、今度は集団の左側を狙うようにし、壁伝いに徐々に排水口に接近させる作戦に出た。それはうまくいき、ゴキブリはゴルフのカップのような排水口に吸い込まれた。安心して水勢を弱めたら、その途端網の隙間から、出てこようとするから私は戦慄した。しかも、今度はムカデまで出てきた。ムカデは子供で、隣のトトロのオープニングのようにくるりと回って元の位置に戻ろうとする。
(これは殺虫剤がないとダメだ......)
そう思っていると、諸星さんが殺虫剤を持ってやってきた。私が数年前にラジオ出演していた諸星さんが最後だった。ラジオでも相変わらず俺様キャラを全開にし、複数のパーソナリティは腫れ物をさわるような対応を強いられた。諸星さんは吉幾三に曲を作ってもらったらしく、その宣伝でやってきていた。諸星さんは、
「吉さんが、吉さんが、」
とイキがっていた。しばらく聞いていると諸星さんの中でも序列があることがわかり、どちらかと言えば男性パーソナリティを上に置いているようで、話の要所で男性パーソナリティの発言に乗っかって女性パーソナリティにダメ出しするような場面も見られた。女性パーソナリティは災難であった。

その諸星さんがゴキブリに殺虫剤をかけているのだが、その勢いが結構強く、私にもかかったので、
「ちょっと、やめてくださいよー、吉さんに言いますよー」
と語気を弱めに、少し冗談ぽく殺虫剤の向きに注意するよう要求したが、諸星は聞く耳を持たないので私の心中は穏やかではなかった。

totoという海外のバンドのドラマーのジェフ・ポーカロという人が、昔、殺虫剤のアレルギーで死んでしまうという事故があった。それは私が中学の話で、その頃私はtotoなんていうバンドは知らなくて、そうしたらクラスメートがtotoのファンなので、
「殺虫剤で死ぬなんてめちゃくちゃダサいな」
と馬鹿にした。さっきも書いたが私はtotoは知らなかったので、殺虫剤の事故も、その友達から聞かされたのである。なかなかフェアな男である。

しかしそれから数年後に私がドラムを始めて雑誌を買うと、ジェフ・ポーカロとはしょっちゅう取り上げられるドラム界では神にも等しい存在だということがわかったので私は「ダサい」と言ったことを後悔した。ドラマー必聴のバンドとして、スティーリーダンというのがいるが、いくつかのアルバムでもジェフが叩いている。私はスティーリーダンが好きなのである。

それでアメリカにドラマーの学校があって、そこにジェフが講師として招かれたとき、ジェフがスティーリーダンのアルバムの曲を何曲知っているのか、生徒に聞くと、生徒はスティーブ・ガッドが叩いた「彩(エイジャ)」という曲しか知らなかったのでジェフは激怒し、
「高い学費を払ってくれたお母さんに謝って、今すぐ学校はやめてしまえ!」
と、言い放つのである。スティーブ・ガッドも神そのもので、ドラム界に革命を起こしたくらいの人でプレイも派手だったから、若い子はみんなスティーブが好きだったのである。

私がこんな風に書くと、まるでジェフがスティーブに嫉妬して激怒したように聞こえるが、ジェフが訊いたのはスティーリーダンの「彩」というアルバムについてであり、そのアルバムにはジェフは参加していない。アルバム名と同そ「彩」という曲にはドラム界の神のスティーブ・ガッドや、他にもジャズ、フュージョン界のレジェンドサックスプレイヤー、ウェイン・ショーターも参加しているので、この曲だけ知名度が高いので、この曲しか知らない、と言っても、それは仕方がない。しかし他の曲も一流のスタジオミュージシャンをそろえており、仮にもプロを目指す人が、それらのミュージシャンを押さえていないのでは話にならない、とジェフは怒ったのだ。

ちなみに私は同アルバムでは「ディーコンブルース」という曲のサックスソロが空で歌えるくらい好きで、「やっぱりウェイン・ショーターのサックスは最高だな」と長いこと思っていたが、前述の通りウェインは「彩」のみの参加なので、私は完全に勘違いしていて恥ずかしい。