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意味をあたえる

文章としかいいようがない fktack@yahoo.co.jp

普通の定義

孤立ジャンケン

私も少年時代の早い段階から、変わり者になりたいと思うようになった。小学校1年くらいから。普通の人とは違う人生を送りたいな、とぼんやり思っていた。しかし、どうすれば違う人生なのか、いまだにわからない。

もっと言えば私は面白い人になりたかったのである。そうなるためにはどうすればいいのか検討してみると、やや逆説的だが「普通の人」になることだった。普通の人の発想があらかじめわかっていれば、そこから上下左右にずらせば、いわゆる独創的な発想や、面白い発想ができると思った。なのでそれ以降物を見たり話を聴いたら、かならず2パターンのリアクションを考えた。まずは多数が反応しそうなこと。それからそこからずらすパターン。このやり方は間違っていないと思う。ただ、二人分の反応を素早く用意するわけだから、頭の回転が早くないとできない。リアクションは速度も大切だった。その点、私はクラスでも頭の良い方だったので、割とうまくできた。例えば面白いことをいいたい人は、面白い言葉を収集するよりと、ありふれた言葉をコレクションするほうが、ずっと効率が良い。

だけれども、変わった人になると問題があって、それは孤立してしまうということだ。孤立は辛い。一見面白い人が孤立するのは矛盾しているように見えるが、例えば仲良しグループが私も含めて7人いて、修学旅行の班が6人の定員だった場合、最初に除外されるのは必ず私なのである。私は中学の自由行動の班を決めるときの、やらせジャンケンのことを一生忘れない。グーパージャスだったか? とにかくみんなで拳を一斉につき出し、その組み合わせだと最初私は仲良し班に入れた。しかし修学旅行実行委員の和田が、それにチャチを入れ、ジャンケンはやり直しになった。そういうのが3回くらい繰り返され、私も多少のテクニックを繰り出しながら群から離れないようにしたが、どっちにしろ物言いがつき、結局私は仲良し班のメンバーになれないばかりか、クラスの嫌われ者No.1とNo.2と一緒の班になってしまった。私はたいそうふてくされたが、でも女子は少しは可愛かったから、まだ良かった。男子と女子の組み合わせは完全なランダムだったから、和田の介在する余地はなかったのである。あるいは和田は最初から女子になど興味はなかった。和田はゲイなのである。

ついでに和田の悪口をもう少し書くと、ヤツはFF4だか5の主人公に自分の名前を、女主人公に自分の好きな人の名前を入れるという気持ち悪いことを行い、さらに愚かなことにそのセーブデータを仲の良い友達に見せ、それにより和田の好きな人が発覚した。名前をY子と言う。それを聞きつけたい私は、早速流行りの歌にY子の名前を織り込んで和田に聴かせたら、私は殴られた。和田はかなりの乱暴者だったのである。

和田はゲームの他のキャラにも仲良しの友達の名前をつけ、つまり他者に対する依存がかなり強い。和田のような気持ち悪くて乱暴な男でも、決して孤立しないのはそういうことなのである。Y子の名前入りのセーブデータの話を聞き、私は本気で気持ち悪いと思ったが、見せられた人はまんざらでもなかったのかもしれない。その人の名前も、カインだかガラフに割り当てられていたのである。私はつい最近までRPGの主人公に自分の名前なんか付けず、付けてもそれは、適当なのが思いつかずやむを得ず、と言った感じで、つまり私は分をわきまえた人というか、リアリストなのである。

今の時代は個性だの自分らしさがやたらと強調される社会だが、みんなと仲良くしたい人は、むしろ個性は殺す、というかほどほどにしたほうがいいと思う。私はどこかの時点で、「孤立やむなし」という発想になって、いつからかそれが逆転し、孤立しないと落ち着かないときもある。

和田の話に戻るが、どういう運命か和田とは高校も一緒で、高校になるとクラスも分かれ、もう私にとってはその他の人といった感じだったが、あるとき和田のいるクラスに和田以外の人に用事があったから、行くと和田はトラベル用のちっこいマグネットのチェスに興じていて、私は
(チェスなんてなに気取ってんだよ、馬鹿じゃねーの)
と思った。