意味をあたえる

文章としかいいようがない fktack@yahoo.co.jp

そらで言えること

昨日の記事は文字についてだったが、その後私は家に帰り、いや、昨日は家で書いて更新したから、はなから家にはいたわけだが、車の中で「プルーストイカ」を読み進めた。車とはナミミが塾から出てくるのを待つ車であった。塾の終わりは21時であるが、私は20時半には着いていた。早く行かないと駐車場が埋まってしまうからである。

文字の起こり、のぶぶんで古代ギリシャギリシャアルファベットについて書かれたぶぶんを読んでいたら、ソクラテスは文字の文化を一切否定していた。だからソクラテスの著書というのはなく、プラトンを通じて現代の我々はソクラテスの思想とかを知るのだが、そういう話を私は高校、下手したら中学くらいから知っていたわけだが、そのときから昨日まで、私はぼんやりと
ソクラテスの時代は古いから書き残す文化とか、下手したら文字すらなかった。一方プラトンソクラテスの後輩だから文字はあった」
と、ざっくり思っていたが考えてみたらプラトンソクラテスの弟子で実際に話もしているんだから、百歳下とかありえない。それなのにソクラテスが死んだとたん、文字がいきなりばっと現れるのはどう考えてもおかしいが、私は古代ギリシャにそんなイメージを抱いていた。あとバランスを取るためにアリストテレスにも触れるが、アリストテレスは奴隷だったらしい。

プルーストイカ」には、ソクラテスが文字文化を拒み、口承文化にこだわった理由が記されていたが、弟子たちにも当然本から知識を得たり、メモをとることなど許さなかったが、あるとき弟子のひとりが大勢の前で演説することになったが、緊張で話す内容が飛んでは不味いと思った弟子が、おそらく世界初と思われるカンニングペーパーを懐にしのばせて本番に臨んだらソクラテスに見つかり、
「お前最低だな」
とマジギレされた。

プルーストイカ」の作者はこの口承と文字の関係を、現代の書籍とインターネットにあてはめ、決して古い議論ではないと説いていたが、確かにそうかもしれない。ソクラテスのどうして口承じゃいけないのか、書いて済ますことがどういう悪なのか、についての考えを読むと、私も本を読むよりも何かを暗記したい衝動にかられた。何を暗記するのかは追々考えるとして、今現在私がそらで言えることはなんだろう、と思い真っ先に思い浮かんだのはブランキージェットシティの「15歳」だった。

私は今から五年くらい前に熱心にブランキーを聴いていた時期があり、ブランキーはもっと以前のバンドでその頃もまあまあ聴いていたが、五年前は特に「15歳」が気に入ったから、これの歌詞を覚えて、外出先で聴きたくなったとき、もしもその場に再生装置がなかったら自分で歌おうと思ったのである。「15歳」は歌詞が二番か三番まであって、その全部が徐々に暗くなっていく風景を示していて、時間の不可逆性を聴く者に感じさせる。

それから最近ではEテレの「日本語であそぼ」という番組で、「方丈記の歌」というのがやっていて、中学のときに暗記させられた私としては、その文章が歌となっていることに感動し夢中で覚えた。歌の内容は三味線を持った男が主旋律を担当し、その周囲で二人の子供が川の流れなどを表現する。あと、この番組では数の単位も歌にしていて、数の単位とは無量大数とかのヤツである。私が子供の頃には、無量大数とか那由多とか、それらがジャポニカ学習帳の見開きに記載されていて、それを見ると私は夜空を見上げているような気になった。ジャポニカ学習帳じゃなかったかもしれない。クラスで一番大きな数の話になると、
無量大数!」
という人がいるが、それは数の単位であって数ではないから、正確には
「9999無量大数
というのが正しい。だけど当時の私は無量大数しか覚えられなかったが、今の私は数の単位の歌も覚えたから、不可思議、那由多、ともっと大きな数を言い表すことができる。

ソクラテスの主張の中で、「文字は人を知った気にさせる」というのがあったが、確かに文字ならば0をどこまでも続ければいいのだから、口で言うよりもはるかに大きな数を表せるが、その身の丈にあった人はほとんどいない。

これらの話から思い出した話だが、昔の職場で私がマイクロソフトのアプリケーションでちょっとしたデータベースを作ったときに、他の事務所でも評判となり、ぜひこちらの条件に合わせてチューニングをしてほしい、と言われたので私は
「わかりました」
と言った。その人が先輩だったからである。それで早速その条件をまとめたファイルをMOディスクに入れて持ってきてもらい、開いたら中にあったのはショートカットだった。デスクトップにあるアイコンをドラッグすれば、コピーできると思いこんでいたのである。
「これはショートカットですよ」
と説明してもその人は理解できず、クリックしても「場所がわからない」とエラーを返す始末...。

この人が愚かなことは間違いないが、私たちの頭の中も、ショートカットばかりになっていませんか? また、あなたのそらでおぼえていることなどあったら、教えてください。