意味をあたえる

文章としかいいようがない fktack@yahoo.co.jp

ウィスキー・ドレッシング割り

都電荒川線のどこかの駅のホームで電車を待っていたら、ロボットに声をかけられた。という夢を見た。私はサラリーマンでだいぶしわの寄っただぼっとしたスーツに身を包み、行きだったのか帰りだったのか、とにかく私はそういう色のスーツは現実には持っていなかった。初めてスーツを買ってもらったのは大学入学時で、それは紺で、その後成人式のときにグレーを祖母に買ってもらった。それから二年くらい経って祖父が亡くなったので急遽礼服を購入した。その後は三着購入したが、そういえば自分のお金で買ったのはそのうちの一回で、しかもそれは一年くらい着たらジャケットが縦に裂けた。そのときは市民ホールで講演だかなにかをきいていたときで、確か東京スカイツリーが建つ前で、
東京スカイツリーは土台が三角形なんだよ」
と教えてもらい、
「へー」と思った。東京タワーは四角形で、私の子供なんかは小さい頃に
「東京パワー」
と呼んでいて、「三丁目の夕日」なんかを見るとあながち間違いではないな、と思った。私にはふたり子供がいるが、どちらが言ったのか、今となっては思い出せない。

映画「三丁目の夕日」について、保坂和志が面白いことを言っていたが、それを同僚に話したらヤヤウケという感じだったからここでは省く。

私以外が買った私のスーツは、どちらも義母が買った。いっちゃくめは、私が結婚してすぐの頃で、そうしたらすぐに友達も結婚式を挙げると言うので、それは夏でしかし私は夏のスーツなど持っていなかったから、成人式のでいいやーと思っていたら、義母が五万くれた。もう一着のほうは、義妹の結婚式で、それは冬だったから夏のスーツは着れないからやはり成人式で乗り切ろうとしたら、
「黒を買え」
となって五万くれた。黒は祖父の葬式の際に買っていたが、ダブルだったから気に入らなかった。紳士服の「A」の中年の背の低い女の店員が私のウエストをはかりながら、
「黒は長く着るものですから、今はダブルは変でも、いずれは変でなくなります」
と言ってダブルしか勧めなかったが、「いずれ」とはいつを指していたのか。祖父の葬式では親戚に、
「若いのにダブルか......?」
と、納得できない、といった表情をされた。

ところが義妹の結婚式に際して新しい黒を買うときには、それは別の店だったが、
「黒はだいたい10年で買いかえます」
なんて言ってきて、今度はシングルを買った。確かにダブルを買ったのは、その時から10年前だった。10年でスーツの流行りも変わり、ズボンをぐいと上にあげたら、
「あ、カッコ悪いから、そんなに上げないでください」
と注意された。そのスーツは細身なので気に入っている。

義母については、あとやはり結婚してすぐのころに私は自分の実印を持っていなかったから
「買ってこい」
とお金を渡されたが、私は実印に興味がないから、判子屋で
「いちばん安いのにしてください」
と言ったら
「普通の印鑑でも大丈夫ですよ」
と言うから、しかし普通のじゃどれが実印かわからないから、横書きのやつにした。大変安く上がったので満足して義母に報告したら、
「それは銀行印だ」
と怒られた。

夢については、ロボットが営むバーへ行ったらウィスキーのドレッシング割りというのが出てきてめちゃうまかった。あとキムチも絶品で誉めたら、ロボットは
「それは東山紀之のレシピなんです」
と悔しがった。