意味をあたえる

文章としかいいようがない fktack@yahoo.co.jp

とある自治体の名と、同じ名前のともだち

私は夢を見た。夢の中で私とMは夫婦であり、Mにはゆうすけという弟がいるのだが、ゆうすけが死んだ。それに対し私が冷静に、
「葬式はいつなの?」
とMに尋ね、特にMにイヤな顔をされたわけではなかったが、私は私の冷静さというか、淡々としたところがむかついた。

私はよく人に
「淡々としている」とか
「冷静だ」
と言われるが、おそらく私の家族も淡々としている。昔祖母の家の中で私が大ジャンプをしたことがあって、そのとき私は小学生だったから大ジャンプをしても天井に届きっこないとおもったから大ジャンプをかましたわけだが、間抜けなことに私がジャンプした地点には鴨居があって、
「ゴン」
と音を立ててぶつかり、私は文字通り頭を抱えた。出血はしなかった。そのとき祖母は茶の間でテレビを見ていて、私が頭をぶつけたのは茶の間と台所を区切る鴨居で、私は
「痛い痛い」
と言いながら頭を抱え続けたが、祖母はこちらを見ようともしない。私は祖母に腹が立ってきたが、それ相応の理由があるやもしれぬと思い、
「痛がってるんだけど」
と直接アピールしたら
「あたしが痛いわけではない」
と返された。あるいは、
「あたしが心配したところで、あんたの痛みが減るわけでもない」
だったかもしれない。祖母は東京育ちで自分のことを「あたし」という。私は冷たいなあ、と思ったが、確かに心配されたって、痛みが減るわけではないから、同情を求める私の方が子供っぽかった、と納得した。

だから、そういうもんだと思って生きてきたが、結婚してからそうでもないな、と思うようになった。妻の一家はまさに共同体というか一心同体みたいな家族で、互いが互いに干渉し合う。そこにあるのはただ感情のみ、という関係だ。だから私は鬱陶しいと思うことも多かったが、周りもだんだんと私の性格を理解し、放っておくようになった。私も義父母の話は聞き流すようになった。

ところで夢に出てきたMとは男で、小さいころからサッカーをしていて、一緒に帰るとサッカーの話ばかりだから、私も
「将来はサッカー選手になるんだろうな」
と母親のような気持ちで思ったが、ならなかった。彼は大学時代にタイヤ屋でアルバイトをしていて、その店主が禿げていて私の近所に住んでいて、私と対して親しくもないのに、横柄な口をきく。しかし実は叔父の後輩で、叔父には腰が低いから、私はこういうキャラって漫画とかでよくいるなあ、と思う。ある夏の祭りのときに、店主はその年の神社総代で、祭りを取り仕切っていて、やたらと私にビールを飲ませた。ビールはプラスチック製の薄い紙コップに注がれ、ビールがつがれると柔らかくなって、滑り止めのぎざぎざが、昆虫の腹のようであった。そのときは雨が降っていて、それなりの降りだったから、ビールにも雨粒が入り、雨粒の衝撃でビールの泡が
「しょわしょわ」
となって詩的だった。

あるとき私が実家にシキミを連れて行くと庭に母がいて、そこをたまたま犬の散歩をしたMの母親が通りかかった。Mの母は昔は髪が長くてくっきり二重でやんちゃそうだったが、今は短くなって顎が二重になった。Mの母はシキミを見ながら、
「うちの嫁なんか流産しちゃったのよ、だから仕事をやめろって言ったのに」
と私の母にこぼした。私の母は適当に相づちをうった。母は昔も今も地味で冷たい女だが、頑ななぶぶんもあり、それは祖母ゆずりだ。祖母はまだ生きていて、金もたくさん持っている。