意味をあたえる

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チャットモンチー「シャングリラ」

私はチャットモンチーはそれほど聴かないけれど、ベストアルバムとそのあと三人組だったのが二人組になってすぐのアルバムはレンタル屋で借りてよく聴いた。それでどちらのalbumだったか忘れたが、たぶんベストアルバムのほうだと思うが、よくベストアルバムって、なんか誰かがお祝いの言葉とか載せたりするじゃないですか。それの片っぽうがBase Ball Bearのボーカルの人が、「私たちは同期で...」みたいな入りから、いかにチャットモンチーの三人が仲良しだったか、等に終始する文を寄稿されていて、それで私は
「同期かー」
みたいな気持ちで読んだ。同期と言えば、私には同期がいたことが今まで一度もなく、それは私は大学を卒業してから二年は遊んでばかりいたから、端から中途採用であり、三社か四社受けた後にようやく受かったところで初めての昼食に幾人かで出かけた帰り道に、四十代か五十代の契約社員の女の人に、
「棚尾さんは、今まで何をしていたの?」
と訊かれ、私は悪びれずに
「プー太郎してました」
と答えると、急にお母さんのような口調になって、
「コラ」
と言われた。フリーター、という言葉はすでにあったが、ニートという言葉はまだなかった。ニートという言葉があれば、私は
ニートでした」
とでも答えただろうか。ニートという言葉があれば、第二新卒とか、そういう言葉だってあっただろうから、私はもっと大事にされたはずだ。とにかく私は最初は「本部」というところにいたが、二週間の研修を終えて地元の支所というところに行き、そこでも
「アルバイトしかしたことのない人なんか、どうして寄越すんだ」
みたいなことを言われた。しかし直接言われたのはもっと後の話で、その頃は私もずいぶんとデカい顔をするようになっていたから、言われても笑い飛ばすことができた。しかし当初は私のいないところで、冗談でもなんでもなくそういう会話がされたのだろう。会話の片割れは、もう死んでしまった。

それでとにかく私は中途採用しかされたことしかないから、同期というのがいなく、いつもひとりぼっちだった。私が最初の職場に入ってから半年後にまた本部は募集をかけ、そうしたら今度は五人か六人人をとり、ひとりはものすごく太った女だったが、その人はすぐに辞めた。あとはみんな男で辞めなかったが、みんな同期だからうらやましい。挨拶をするにもみんなでセットだから、ひとり恥ずかしい思いをしなくて済む。だけど私は逆に考えると入ってわずか半年で後輩が五人もでき、彼らはみんな私よりも年上だったが、みんな敬語を使うから、私は気分が良かった。しかし五年くらいして私は辞めてしまった。

いつまでもシャングリラの話にならないからこれくらいにするが、シャングリラという曲はスネアドラムの音がとても低くチューニングされていて、よく聴くと最初の「バン」という音に遅れて「ゥオン」という音がついてくる。「ゥオン」が低い音なのだ。そのチューニングをしたエンジニアが、チャットモンチーのベストアルバムに寄稿していたところによると、こんな低い音使えないと思っていたら、その音がそのまま使われていて、あるときコンビニいたら「シャングリラ」が流れてきて、そのとき初めてその低いチューニングのスネアが耳に入って彼は
「マジかー」
と思ったそうだ。