読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

意味をあたえる

文章としかいいようがない fktack@yahoo.co.jp

fktackの短歌通信

昨日の記事で短歌を書いた後に、短歌でない文章も書こうと思ったが、ハイボールを飲んでケーキを食べたら、もうそういう気にはなれなくなってしまった。ケーキを食べたのは、私たちが結婚記念日だったからだった。私はスイカを持って帰ってきていて、それを見た義母が私もケーキを買ってきたものと勘違いし、滑稽そうに大口をあけて笑った。確かにスイカは白い厚手の袋に入っていたから、勘違いしても無理はなかった。私は義母の大仰な笑いで、ようやく今日が結婚記念日であることを思い出した。スイカは私が買ったわけではなかった。営業が客先にもらったものを、譲ってもらっただけであった。
「押し付けるみたいで、悪いね」
と彼は言った。年は上なので、私は一応喜んで見せたが、本心では嫌がっているのは明らかであった。普通だったらもう少し仕方無さそうに受け取り、部署内で欲しそうな人に分け、誰も欲しがらないので私の機嫌が悪いと捨ててしまうのだが、なぜ捨てるのかというと、最初の時点でゴミを押し付けるような感じであるから、ゴミを有り難がるように思われるのは心外だからである。

今回は何が違ったのかというと、その前に女性の営業が私のお弁当を入れているピングー(ペンギン)のバッグにつけられたお守りを見つけたのが始まりで、それは先月の父の日に子供からもらった私の似顔絵が入った物だった。それを子供はできるだけ目立つところにつけ、会社の人に自慢をしなさいというので、私のほうはあまり目立つ場所だと紐が切れて落とす可能性がありますと反対意見を述べ、最終的にピングーのバッグにつけるというところに落ち着いた。ピングーは弁当以外に用途がないからである。私は会社に来るとそんなものはすぐに忘れ、仕事に没頭し、同僚のミス(商品のコードを読み違えて違う店舗に発送しやがった)の尻拭い(先方にシステムの履歴には絶対に残すなと言い含めながら)をしていたら、
「これなんですかー」
と顔を真っ赤にした女性営業に言われて、私は子供の承認欲求を満たして肩の荷が降りた気がした。顔が真っ赤なのは外が暑かったからだ。外から帰ってきて第一声が、
「涼しい」
だった。彼女は顔立ちも整っていたから、男性にモテた。そして結婚をした。しかし物を置きっぱなしにするのが玉に瑕だった。私はそのことが夫婦喧嘩の火種になるのではないかと勝手に妄想した。最近は男性でも細かいのが多いから。私はお守りの経緯を彼女に説明し、自慢したいのは決して私ではないことを釈明した。私は彼女の顔がやがてまともに見れなくなった。そういう私の感情を察したのか、突然男の営業が、
「それじゃあ、子供さんに、スイカを持って行って、喜ばせてあげなきゃ」
と言った。彼は親子の美談は適当に聞き流しながら、ずっとスイカを押し付けるタイミングを伺っていたのである。私はそういう彼の汚さに心底うんざりしたものの、確かに子供はスイカを喜ぶのであるから、これをむげに断るとか、捨ててしまうとか、そういう行為がすべて子供っぽくなってしまうから、私としては受け取るざるを得なかった。彼は私のそういう考えを察したので、
「押し付けるようで悪いね」
と、心底悪そうな態度を示した。彼の娘はすでに成人を迎えており、また妻は他界していた。