意味をあたえる

文章としかいいようがない fktack@yahoo.co.jp

サーベルタイガー

子供がサーベルタイガーについて教えてくれた。なぜ現代にはサーベルタイガーのような長い牙の動物がいないのかというと、長い歯が獲物に刺さると抜けなくなることがあり、そのまま歯が折れちゃうとか、最悪死んでしまうことがあったから徐々に歯の短いものが残ったらしい。私は進化論を知っているから「残った」という言い回しになったが、子供は知らないからそうは言わなかった。とにかくサーベルタイガーの化石には歯のぶぶんに肉がついたままのものがよく出るらしい。私は
「ハテ、肉の化石なんてあるのかな」
と思ったが、そんなことを言うのは野暮だから黙っていた。しかし我慢できなくて
「化石って骨じゃないの?」
と訊ねたら、子供は意に返していない様子であった。

2

子供が緑という漢字をならった。これって三年生で習ったの? ときいたら「そうだ」というから私は「やっぱり」と思った。私は自分が緑という字を習ったときのことを覚えている。三年生の春頃だった。二年生でもっと難しい字(曜、とか進、とか、しんにょうがむずかしい)を習っていたから、割とそんな字もあるんだくらいの余裕を持った態度で黒板を見た。春だから緑なのかな、とも思った。糸へんなんて楽勝だった。しかし私は漢字全般、暗記もの全般が苦手だった。高校生なり、倫理などで○○というワードをつかって説明しなさいとかいう問題で、何でも書けば三角くらいはもらえるだろうとだーって書いたら、普通にバツだったから驚いた。隣の席の人が、
「そんなに書いてバツなんて、どんだけ燃費悪いんだよ」
と突っ込んだ。書きすぎて先生も読むのが嫌になっちゃったんかもしれない。そういえば良い評価をもらうときは、短くぴしっと答えられたときだ。そういえば一昨日に、先輩にどうしてこれがここにあるの? みたいに訊かれて、それはそれがそこにあるのは奇妙なことだから、そういう気持ちを汲み取って、背景から説明したら、
「俺そういうこと訊いたっけ?」
と言うから私はカチンときた。こいつは私の起承転結を頭ごなしに否定するのだ。私が質問したときは、
「こんなこと言ったら変に思うかもしれないが」
みたいな枕詞を入れるタイプで、私はいつも心の中で、
(早く本題に入れよ)
と悪態をつくのだが、私は今はみんなに良い顔をしなければいけない立場だから、ふんふん、という顔をして聞く。そして聞き終わったら
「つまり○○○ってことですかね?」
と三文字くらいにまとめて同意の逆質問にして、お前の文学なんて圧縮したらこの程度の価値しかありませんよ、と思っている。仕事は楽しい。