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意味をあたえる

文章としかいいようがない fktack@yahoo.co.jp

頭痛

私の母方の祖母はまだ存命で、もう90才を超える。祖母がまだ80代のある日、かかりつけの歯医者に行ったら、
「少し太ってきているので、甘い物は控えましょう」
と言われた。確かに祖母は祖父が死んだ頃には周りが心配するくらい痩せたが、ある日を境にまた以前と同じように食事をとるようになり、髪を金だとか紫に染めるようになった。祖母は私が子供のころから髪を黒く染めており、逆に祖母の妹は全く染めずに真っ白だったから、頭の色が彼女たちのトレードマークだった。祖父は毛そのものがなかった。その祖父が一足先に亡くなり、祖母は一時期髪を染めるのをやめたら一気に白髪になり、私は
「おばあちゃんになったな」
と思った。それが再び髪を染めるようになり、食事もよくとるようになってお尻も大きくなり、歯医者に「太りすぎだ」と注意された。祖母は
「どうしてこんなババアになってまで、色々我慢しなきゃいけないんだよ」
と、歯医者に逆ギレしたらしい。私はこのエピソードが好きだ。そして、年をとることに、なんらかの希望を感じる。

私の会社の後輩が一時期、
「自分は明日死ぬということになっても、それは構わないと思っている」
という旨のことを言っていて、私は「子供っぽいな」と思った。それはどことなく、いつまでも健康で生きていたいと思っている人を侮蔑する響きがあった。思慮深い人は、長生きなんて恥ずかしくてとてもできないと思っているのかもしれない。しかしながら、私だってかつて夜中にお腹が痛くなって病院に行ったときは、道中
「まあ、死ぬかもしれんが、しゃーない」
と思った。あまりに痛いから妻に救急車を呼ぶように頼んだが、聞き入れてもらえなかった。しかし今から思えばそれは痛みとしては序の口で、私はそのあと尿管結石に、また以前には群発性頭痛になったこともあったが、それらのときは、死ぬことを考える余裕がないくらい痛かった。頭痛のときは私もまだ若かったから、寝ていれば治ると思い、実際一晩寝ると元気になるのだが、昼になるとまた痛み出す。それを何日か繰り返してようやく病院に行ったら、
「風邪です」
と言われ、私も風邪なわけないだろう、と思ったが、処方された薬を飲んだらすっかり元気になり、それから10年くらい今に至るまでそういう頭痛はないから、もう何も文句は言えない。その病院は今では代替わりして建物も改築され、駐車場も広くてきれいになった。