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意味をあたえる

文章としかいいようがない fktack@yahoo.co.jp

悪いことをした

私は雨が降っていたので仕事帰りに駅まで送っていくよと後輩に声をかけた。若い後輩である。天気に関係なくいつもキャンパスシューズを履いてくるので気の毒に思ったのである。靴に対してである。私の職場は駅から遠くて近い方の駅も遠い方の駅からもだいたい同じくらい離れていた。つまり線路沿いにあるのである。しかし会社から線路だとか走っている電車が見えるわけではなくこの辺の説明が難しいが途中に工場や桜並木があるのである。桜並木は川沿いにあって私はたまにそこの道を通って出勤するがそこのコンクリートはひび割れている。川沿いの道はよく一方通行であることが多く両サイドで反対方向の一方通行でつまり川がセンターラインや中央分離帯の役割を果たすことが多いがこの道はどちらも両側通行だから珍しい。それでもなんとなく行きも帰りも向かって左側を通るが全貌から対向車がくることは滅多になかった。それよりも中学生だとかによく出くわした。細い道なのである。そのとちゅうにはいかにもこだわりました風の和食屋があって切り株みたいなのに今日のオススメみたいなのを道路に向かって張り出している。いったい誰が見るのだろうといつも思うが誰か見るのだろう。


それから年寄りの先輩も通りかかったので声をかけたらありがたいありがたいとすんなり誘いに乗った。後輩はいいですいいですみたいなかんじだったが前述の通り私は靴に向かって誘っていたから聞く耳を持たなかった。年寄りは口ではありがたいと連呼するくせに戸締まりを手伝う気はまったくなく次第に私は彼の運転手のような気になってきた。靴の先も雨に濡れてしまった。しかしもう何年も一緒にやって彼の性格はわかっていたからムカつきはしなかった。むしろ後輩が少しは手伝ったのでありがたいとすら思った。それから駅に行ってから彼らはこれから同じ電車に乗らなければならないことに気がつき悪いことをしたと思った。私も若いころ帰り道で同僚とどのタイミングで離れるかに腐心していたことを思い出した。今だって電車通勤なら腐心するだろう。帰りに一緒にならないよう会社を出るタイミングや歩行ルートをずらすのである。


しかし彼らは私の車を降りたとたん片方が足早に片方が大仰にお礼を行ったりして巧みにタイミングをずらしていたから問題なさそうだった。あとはなるたけ離れた車両に乗るのだろう。電車が八両十両とあるのは気まずさ防止のためである。