意味をあたえる

文章としかいいようがない fktack@yahoo.co.jp

溝口

昨晩寝る前に山下澄人「水の音しかしない」を読んだ。好きな小説だからであった。山下澄人は先日に芥川賞を穫りこれはそれよりもずっと前の小説だ。水の音しかしないの水は津波のことであり主人公はとちゅうで東日本大震災に遭遇するのである。東日本大震災という言葉が作中に出てくることはないが「二時四十六分」ですべてが変わってしまったというから震災のことなのだろう。変わってしまったと言ったのは溝口で溝口は主人公斉藤の上司である。私は溝口が好きだ溝口は私の会社の上司に似ている。偉ぶったところとすぐ不機嫌になるところが似ている。この手の人たちを見ていると偉ぶりたくて偉くなったんだと思える。溝口は「仕事は馬に食わすほどある」と言い自分でうまい喩えだというふうに得意になる。仕事がたくさんあるというのは実際に斉藤以外の同僚の香山とかがみんな津波に飲まれて死んでしまったからである。死んだという風に話の中ではっきり言われるわけではないが最後まで読むと死んだのだろうと思う。そういう意味ではわかりやすい小説である。しかし私は溝口がタクシードライバーに車内で煙草を吸うところを咎められると「俺は好煙(すきけむり」なんだよ」と言い返すところなんかが好きでそういうところがこの小説のメインで地震だとかは付属品のようなかんじがする。


ギッちょん (文春文庫)

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