意味をあたえる

文章としかいいようがない fktack@yahoo.co.jp

小説的

嘱託の笹田が犬の具合が悪いから帰りたいと言う。最近飼い始めたと聞いていた。それが去勢の手術で合併症を起こしたらしい。今の犬は雄も雌も去勢をすると笹田が言った。だから笹田の犬が雄なのか雌なのかわからなかった。言ったのかもしれないが聞き逃した。笹田は普段から早口でしゃべるから聞き取りづらいのだ。声も大きい。私は会議が終わったところだったのでなお耳が遠くなっていた。テレビ会議でテレビの接続がうまくいかなくて半分聞き逃した。半分は言いすぎだ。上司は電話でもいいから参加しろというから電話を耳にあてながらパソコンのタスクマネージャを立ち上げたりCPUが100パーセントになって再起動もままならず結局電源ボタンを長押しした。それでようやく切れてまた立ち上げると「政府モードにしますか」なんて訊いてくる。こちらは過激派ゲリラになりきって「いいえ」を押す。会議はとっくに始まっている。電話口から上司の声がする。上司は私よりも下だ。なおかつ私の弟と同い年である。年上の弟などいないから下なおかつ弟という表現は野暮ったい。しかし義弟という場合もある。現に義弟は年上だ。なおかつランドクルーザーに乗っている。世の中すべてのランドクルーザーのオーナーが年上とは限らないが義弟は年上だ。正月に会ったきりである。よく考えたら弟とも正月以来あっていない。弟は嘔吐した。結婚したばかりでどこかしら勝手がちがったのだろう。結婚すると実家がアウェーになる。ホーム&アウェーのアウェーだ。その弟と同い年の上司の声を聞きながら仕方がないから営業のパソコンを借りてそれを接続することにした。電話を耳にあてながら人に頼みごとするなんて何様だと思う。しかし「電話で参加しろ」と言われたから離すわけにはいかない。私の席にはパソコンがな二台ありちょっとしたプログラマーデイトレーダーのようだった。一段落したら笹田がやってきて帰っていいかと訊く。犬が危篤なのだ。最近では去勢をしてワクチンも打たなきゃコミュニティーに参加できないらしい。

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