意味をあたえる

文章としかいいようがない fktack@yahoo.co.jp

古くなる私

子供の参観日があって見に行くと若い教師ばかりであり古い教師もいるがそれだって私が学生時代についていた教師に比べれば若いはずだ。授業はiPhoneやモニターが活用され教師は板書をほとんどしない。去年の担任はまだ少しは書いたからまた新しくなったのだ。チョークの粉が喉に入って教師の寿命を縮めると私の時代は言われていたから文部省が真面目に考えたのだ。校長だけが時代に取り残され農夫のような格好をしている。朝から雨だった。上の子は友達と勉強すると言って出かけた。500円しか持たずにどこへ行こうと言うのか。500円で心配だなんて私の脳もずいぶん資本主義にやられたもんだ。マックでも行くのだろう。私が訊くと
「まだ決めてない」
とのことだった。池袋の図書館は駅から歩くが可もなく不可もなく良かった。


この学校は校庭の水はけが良くそれは私が子供のころから言われていた。ちょうど私が見たのは理科の授業で声の低い女の教師が白いワイシャツを着ているがソフトボール部の声出しのような授業を行う。肌も浅黒くそれが星座の位置がいっしゅんでわかる金属製の皿の使い方をレクチャーしているからちぐはぐだった。何人かの生徒が方位磁針のぐあいがおかしいと教卓まで相談にきた。予備が何個かあった。
「今の星空はこんなかんじです」
と説明するが真っ昼間に星は出ない。こういう星空だと正解と教師はスマホのアプリをモニターに映すが生徒は金属の皿をくるくる回しているだけでやっぱりおかしい。金属の皿なんて18世紀みたいだ。私の子供はまったく興味を示さない。あとであの先生が嫌いなのかと訊ねたら「違う」と言っていたが。


雨足がどんどん強くなり水はけのよい校庭にも一筋の川ができそれが天の川のようだと思った。くしくも私も宇宙の本を呼んでいて我々の住んでいる領域は天の川銀河と呼ばれていてその外にも色んな銀河がある。目に見える銀河もあるが昔は宇宙にあるのは天の川銀河のみで他の銀河っぽいのもみんな天の川の中にあると思う人もいて論争になっていたのだ。今私が読んでいるぶぶんでは宇宙のビッグバンがあった派となかった派のぶつかり合いでビッグバン派が押されている場面である。


授業参観にくる親はだいたい馴染みの顔ぶれになっているがその馴染みがだんだんと古くなってきている。肌が白い蚊の鳴くような声のお母さんも最初は娘のようだったがだんだんと痩せてきてほうれい線が目立つようになった。湯川さんの奥さんは顎がたるんできた。協調性のある人ほど老けるのは早い。一方で学校はいつまでも若い。子供みたいな教師がいて校舎の壁はずっと白い。