意味をあたえる

文章としかいいようがない fktack@yahoo.co.jp

区長さんの箱

義父が「区長さんの箱」なるものを作成した そこに区長さんからの配り物をいれてもらおうというのである 区長専用のポストである 作りはいたってシンプルで魚屋さんが喜びそうな発泡スチロールの箱に側面と蓋にマジックで「区長さんの箱」と書いただけである マジックは私が提供した 普段カレンダーに仕事が休みの日に丸をつけるのに使うマジックの黒を貸した 私は青で丸をつける 妻は赤だ 赤と青が重なる日はだいたいラーメンを食べるのである 行列のできるラーメン屋というのが近所にあって妻が行きたがるのだ 妻は行列があってもなくてもひとりで食べ物屋に入れない性質なのだ 昔「私はひとりで牛丼屋にもはいれる」と自慢していた女がいたから入れない女性は多いのか もちろん私だって積極的に入れるほうではない セルフサービスが苦手だったことを以前書いたが店それぞれのシステムが把握できないと落ち着かない 食券を渡す相手を間違えたらどうしようとか思う いつか行ったカレー屋では店員がひとりもおらずまごまごしていたらそこにいた唯一の客の男が奥に向かって 
「おい! 客だよ!」
と怒鳴ってくれた そのときの声のトーンで男と店主の関係が把握できた 私は男からはいちばん遠い席についた カレーは美味しかったが店が静かすぎて落ち着かなかった 写真でもとればひとりでも不自然じゃない気がしカメラを構えかけたが馬鹿馬鹿しいからやめた