意味をあたえる

文章としかいいようがない fktack@yahoo.co.jp

途中式(4)

会社に川のつかない人はもうひとりいてすでに言った人は元営業所のT所長でこの人は営業所で定年を迎えた後に配送係になったがあるとき前を走っていた教習車をしつこく煽ったために教習所から本社にクレームが入って懲罰委員会にかけられて作業所に異動になった そういう話は私たちの耳には入らずT所長は「よお」という具合にやってきた 少しして事務の榊原さんがいなくなったことをうれしそうに話すのを聞いて知った T所長が嫌みな性格だということは知っていた 面倒事を相談すると本当に面倒そうな顔をした 髪を整髪料でしっかり固めていて趣味は渓流釣りだった とても渓流の似合う髪型ではなかった おまけにメガネをかけていたから渓流というより経理だった T所長には息子が二人いるらしい この会社に来る前は家具屋に勤めていたが倒産して来たのだった


T所長はお気に入りのナノハちゃんがやめてからおかしくなった ナノハちゃんは元々事務希望で入ったがT所長のはからいで営業となって客先はいつもT所長と一緒にまわり行き帰りも駅まで自転車を並べて往復した 会社は駅から離れていたから自転車で来ないと時間がかかった 駅前通りから住宅街を抜け国道に出てからもしばらくあった 住宅街は葡萄を育てている人が多かった あるいは観賞用かもしれない 集合住宅も多かったがほとんどは空き家だった 竿のかかっていない物干し台が目についた それと貯水池と公園と学校があった 学校は小学校のすぐとなりに中学校があったので同じ面子でそのまま中学に上がることが推察される 私は小学より中学が3倍くらい離れていて面子も半分しか同じじゃなかったからそこを通る度にうらやましかった


会社には車で来る人も多かった


ナノハちゃんはあるとき会社を辞めてしまい辞めるとなったときには一体誰のせいだみたいな話に持ちきりとなった 誰のせいもT所長が馬鹿みたいに四六時中囲うせいだろうと思ったがそういう雰囲気ではなかった