意味をあたえる

文章としかいいようがない fktack@yahoo.co.jp

途中式(6)

ナノハちゃんと私は年は8歳離れていたが入社した年は同じだった ここからはNと呼ぶことにする 私は中途採用でNは新卒だった 私は土曜日の面接でNは平日だった 一次試験は平日で休みを取っていったが二次でまた休むのは難しかった そのときは別の会社に勤めていた 二次面接の連絡を受けたときに断ったら「土曜なら来れるだろう」と向こうが日にちを変えてくれた 前の会社というのはフロアに大勢の人が働いていてそのほとんどが女だった ぎゅうぎゅうに詰め込まれている部署もあればスカスカのところにあった それらがセキュリティ付きの思い扉で区切られていた スカスカのところは終始暇そうだった そこに自衛隊みたいな髪型の男がいて私はその男に難癖つけられたことがある 同じ派遣元だったのである 池袋で忘年会をやるというので30分くらい同じ電車に乗って気まずかったのがいちばんの思い出だ 自衛隊はもちろん軍のおさがりを模したブルゾンを着用していた 趣味は単車ですとでも言いたげな出で立ちだった 実際そうだったのかもしれない 池袋に社長という人がいてブルゾンは社長に
「肉を追加しろ」
と命令をした 呼び方も社長ではなく「大西」だった 旧知の仲なのである 私たちはしゃぶしゃぶ屋にいて肉はブルゾンのおかげでたらふく食べられたし社長もたくさん肉が振る舞えて自尊心を満たしたが私は
「この近くの携帯屋に勤めてましたよ」
と言うくらいであとは何もしなかった 難癖をつけられたのはその次の飲み会だった 飲み会の前に「ミーティング」というのがあって数字のこととか私には意味が分からなかった 飲み会で社長は私にはアグレッシブさが足りないと言いブルゾンも同調した もう肉は出てこなかった 若い女がひとり増えだいぶ社長と懇意の風であった 私は社長の示したい威厳の犠牲者だった


それから私はひとりで昼食を食べる機会が増え社食に行けば誰かしらに顔を合わせるからコンビニで大盛ペペロンチーノを買って公園のベンチで食べた 公園に人はいなかったが周り中にいろんな車が止まっていた やがて季節が夏にさしかかってどうにも暑くなってきたころにそこを去った