意味をあたえる

文章としかいいようがない fktack@yahoo.co.jp

途中式(10)

前回までのあらすじ:愛知の人は早口である


三谷さんは社長の大目玉を食らって一気に平に降格したが本人は内緒にしていたので私たちはそれから2年は三谷さんのことを「三谷さん」と呼び続けた その間ポストはずっと空だったから誰も気づかなかった しかも商品管理の浜田が辞めて三谷さんはその仕事を引き継いだことが三谷さんのブランドを高めた しかし実際私たちは三谷さんが落ち目だったことは気づいていて(あんなに社長に怒られたのだし)余計な仕事を振られたくなくて三谷さんの降格を見てみぬふりをしたのである 三谷さんも自分のプライドを維持できたからウィンウィンであった


ところで震災のとき下関川はまだ入社していなかった 下関川は以前は某スポーツショップ契約社員として働いていた 震災のときはすでにそこを辞めて半年ほど経っていて入社するのはそれから2ヶ月後だった そのため会社の計画停電のことも知らなかった 下関川の家の近所に公民館があったとかで下関川の住んでいる区画は計画停電の対象外だったので、下関川は計画停電そのものをよく知らない 停電にあたる時間は機械を動かせないためできる仕事は限られた できる仕事も明かりがないとできなかったため作業台を窓辺に移動する必要があった 室内は窓が少なく春の日はまだまだ弱々しかった 震災があったのは3月11日の3時前だった その1週間前は本社で研修を受けなければならずそれにはNも参加していた