意味をあたえる

文章としかいいようがない fktack@yahoo.co.jp

途中式(16)

三谷さんが具合が悪くなって床に寝そべりだして冗談かと思った 冗談かと思ったというのは品川が言っていて品川はそういう茶目っ気があった 見た目は無口そうなのだが 体格も良いが何年か前に大病を患った 話は飛ぶが品川が買ったエロ雑誌の袋とじを立川が破ってしまうという事件があった それでも品川は黙っていてこの話は破ったほうの立川から聞いた いつまでも破らずに放置しているから気になって破いたというのだ 雑誌はトラックの中にあって当時は品川がメインのドライバーで立川がサブだった 何年か前にトラックはみんな外注になった すぐにドライバーが替わる外注先でずっと長い人がいたがその人は若くてここへ荷下ろしするたびにトイレを借りていくので私たちは「トイレ太郎」と呼んでいた 人によっては「トイレ野郎」だったのかもしれない なぜトイレ太郎はいつまでもうちの担当なのかみんなと話していたらトイレ太郎はつまり運転の腕が未熟だから他へ行かせてもらえないんじゃないかということだった トイレ太郎以外の人はみんなもっと遠くへ出るようになるのである その運送屋は会社から車で10分のところにあって社屋は立派でアテネの神殿のように屋根が高かった 重い扉を開くと制服を着た事務員がいて私はいつも「今時制服かよ」と思うのだった 3度くらい訪ねた 夕方に行くと仕事を終えたドライバーが輪になって談笑している姿を見ることができた ところで制服といえば銀行だが昔行った銀行でちょっとお高くとまった受付がいたらあるときから私服に変わって融資担当だかになったのだろうが尚更お高くとまった気にくわなかった