意味をあたえる

文章としかいいようがない fktack@yahoo.co.jp

浅瀬

帰り道に素振りをする少年とすれ違った 私は歩いていた 駐車場は狭い上に少し距離があった 途中の階段は少し柔らかかった 私はとても軽い靴を履いているので柔らかさが直に伝わった 元来素振りというのはとても孤独な行為だがその少年の周りには親兄弟がいてさらに人数で考えると隣組も何世帯かいたのではないか、とにかくそれらが雑談しながら少年の素振りを見守っている なんだが文字にしてみると夢の話みたいだ 少年は坊主で紫のTシャツをきていた 半袖の下にはグレーの長袖を着ている ダイエットかもしれない 8時をすぎていたから夕飯の後なのだ 


メインの道から離れてくると安そうなアパートの前にさしかかりその前で電話をしている男がいた まだこの時期ならいいがこれから寒いのに外で電話なんて大丈夫だろうか どこでも電話できるのが携帯電話なのに家では電話できないのである 壁が薄いのである 場所が限定されるのでむしろ電話ボックスのようである 電話ボックスで電話をするカップルは晩秋に「冬は冷えるだろうな」とか思うのである そして冬が来る前に別れるのである