意味をあたえる

文章としかいいようがない fktack@yahoo.co.jp

秩父方面へでかけた 朝5時に出ると意気込んだが案の定出発できたのは8時近くになってからで私は実のところ4時半に目が覚めたが特に家族を起こさなかった それでもプランAを諦めると目的地には早く着いた 秩父駅周辺は古い建物が多く踏切も遮断機がなかったりして和んだ 寺で「フリーマーケット」と看板が掲げられていたが中に入ると老婆がひとりゴザを敷いて結婚式の引き出物の食器セットを打っているだけなのも良かった その向こうにおそらく廃園になった幼稚園のがらんどうになった下駄箱も良かった 鎖の外されたブランコが羽のもがれた虫のようだった 縁日とか運動会とかそういうときにもブランコの鎖は外された 近くで芝桜が見られるというから行ったが美しいものを無理やり押しつけられているみたいで楽しくなかった 露天で「100年いなり」というのを買ったが食べながら飽きた 「いなり」と「左」の語感が似ているからしばらく子供と「その先いなりね」と言ったりして遊んだ お地蔵さんのこめかみにミノムシがついていて中から芋虫が出たり入ったりして興味深かった 


いくつか神社を巡っていると雨が降ってきた かなり強い雨だったが私たちは降り出した頃には車に乗って帰るところだった 二組の男女が歩道を走っていた降り出す前に一度売店で見かけた男女で缶チューハイを飲みながらやたらと「年取ったね」と言い合っていた どう見ても学生か卒業したてだった 私は微笑ましい気持ちになった 誰だって今この瞬間がいちばん老いているのである 確かに彼らは見るからに愚かしかったがそれでも彼らは間違っていなかった 彼らはまだまだ足腰が丈夫で少しでも雨粒を避けようと走っていた 先頭の男が両手を水平に振りながら女の子みたいな走り方をしているので私たちは車の中でさんざん笑い物にした