意味をあたえる

文章としかいいようがない fktack@yahoo.co.jp

最後の平屋

実家の近くに平屋があって今日前をとおったら建物の周囲に足場が組まれていて黒いネットがかけられていて「いよいよ二階建てになるのかな」と思った 私の家も私が中学になるまでは平屋で200メートルくらい離れたその平屋は私の家と外観も似ていたがら私はシンパシーをかんじた その2軒以外はみんな二階建てで田舎だから大きい家ばかりだった そのことを馬鹿にされたりコンプレックスをかんじたりはしなかったが「つまりウチは貧乏なんだな」とぼんやり思っていた


平屋の家は大木さんという家で友達があるときその表札を「たいぼくさん」と読んだので私は面白くかんじたので私も「たいぼくさん」と呼んでいた あるときたいぼくさんちの玄関先で男が殴り合いのケンカをしていてたまたま前を通りかかった私はとてもびっくりした それまで殴り合いのケンカなんて子供だけがするもんだと思っていたので衝撃を受けた 私は怖かったので見ないふりをしてその場を離れた 他に目撃者はいなかったと思う


ほどなくしてたいぼくさんちの持ち主は変わったのでたいぼくさんではなくなった 表札はなくなって門には名刺が貼られた そこには「代表取締役」と肩書きが印刷されていた 社長が平屋に住むのかと私はまた衝撃を受けた 結局その社長を見ることは一度もなかったが 窓辺にはいつもお婆さんが腰をおろしていた 社長のお母さんと私は勝手に呼んでいた


月日が流れて私が大人になって結婚した頃またそこの平屋の住人が変わったのか今度は庭の一部が駐車場に変わりそこにオープン2シーターが置かれるようになった 社長の車の可能性もあったが今度はそこに小さい子供も住んでいたので比較的若い人が住むようになったようだ


私の住んでいる地域は田舎だがさいきん畑だった場所にどんどん家が立ち並ぶようになっていて景観がどんどん変わっている そんな中平屋はずっと平屋のままで中の人間だけが入れ替わっている