意味をあたえる

文章としかいいようがない fktack@yahoo.co.jp

2人の先輩

私は2004年に就職をしてそこはとても小さな事務所で私を含めて3人しかいなかった 組織全体としては100人くらいいたがそこには3人だった 私はやめた人の代わりに入ったがその人は契約社員の女性でそれまでも3人のうち女性がひとりというのが慣習だったから私が入ったときには若干歓迎されない雰囲気があった


2人の先輩はどちらも当時40歳前後で今の私とだいたい同じ歳である 両方男だが私の中で片方は父親っぽくてもう片方は母親っぽいなと思った 父親の方はとにかく「聞くのは恥」というタイプで「教わってないからできません」と言おうものなら睨まれてそれでも結局できないものはできないから「教えてください」と頭を下げると仕方なさそうに「今やってみせるからおぼえて」と言われた そういう時代だったのである 母親の方も似たり寄ったりだけど早い段階で「忙しくてちゃんと教えられないからまた質問してくれ」と言ってくれたから気持ち的には楽だった そして私も我が道をいくタイプだったので勝手に仕事をおぼえていった 一年経つ頃には別の事務所の先輩に「お前は威張っているけど威張るだけのことはしている」と言われてますます調子に乗った そういえば年がら年中怒っていた気がする 怖いもの知らずだったのである


私は母親タイプの先輩を慕っていた 後から聞いたが教えても言うことを聞かないから途中から放っておいていつか戻ってきたときに「それみたか」と説教しようと思ったらついに戻ってこなかったのが私だったそうだ 私は聞き分けの良い後輩だと思いこんでいたから少しショックを受けた そういえばケンカをしたのも一度や二度ではなかった気がする 仕事のことでなおかつ前向きな内容ならケンカはOKと思っていた しかしそのために「勝手に無礼講男」と呼ばれたりしたのだ 


母親先輩はとにかく冗談を言う人で特に人を貶める冗談が好きで上司の前で「この人ぜんぜん仕事しないんです」とか「今日はいますが普段は遅刻ばかりです」とか言って私を困らせた しかし今は私がそういうことばかりを言って「どうしてすぐ仲違いさせようとするんですか!」と怒られたりしている


父親先輩は私が入って三年くらいしたときに自殺してしまった だからほとんど何も影響は受けていない その死に私はまったく無関係ではなかったが何度思い返しても同情の余地はないと思った しかしここ数ヶ月私が抱いている感情ってひょっとしたら当時彼が抱いていたものと似ているのかもしれないと思えてきた 中年は難しい