美容院の帰りにコンビニに寄ろうと思い、しかし入ったコンビニはどこも車で溢れかえっており、最初に寄ったセブンイレブンは、裁判所の近くにあった。裁判所の少し先には神社があり、ここはよく結婚式がとりおこなわれる場所で、私も何回か来たことがある。私の車の前を巫女が横切り、巫女は長袖の巫女で、暑そうであった。今日は晴れている。(しかし半袖の衣装などあるのだろうか)
「あれ? 晴れてます?」
「晴れてますねー。今日降るんですか?三鷹のひょう、すごかったですね。流氷みたいな」
私は昨日も仕事を休んでいて良かったと思った。もし仕事なら、ニュースは見ないので、三鷹にひょうが降ったなんて知らない。しかし流氷みたいだとは思わなかったので、私はそこまで真剣にみてなかったのかもしれない。
美容院で私はいつもよりよく喋り、B男のことを喋り、あとは小説のことも話した。何読んでんですか? と聞かれたので、私は照れ臭そうにしながら、Yという小説家の話をした。最近のひと? と聞かれたのでそうです、若くないですが、と答えた。
「社会性は?」
と3回くらい聞かれ、私は「ないです」とその度に答え、レジで美容師はその名前をメモにまでとっていたので私は心配になった。しかし、「読まない方がいいですよ」というのも、侮辱と取られる可能性もあるので、黙っていた。しかし私はなぜ、小説の話になるとこんなに弱気なのか。帰り際には東野圭吾の名前を出して、牽制をしておいた。
帰り道にコンビニに寄ろうと思ったが、どこも車でいっぱいであったので、私は橋を渡った後に、旧道に入った。旧道に入れば、コンビニはたくさんありそうだと思ったからだ。しかし私がその旧道に入るのは久しぶりの話で、もう違うテナントになっている店もあった。やがてローソンがあったので入った。駐車スペースはひとつだけ空いていた。
私はオシッコがしたいと思い、トイレに向かったが、その途中にATMがあり、側面の貼り紙に「手を止めて、私の話を聞いてください」と書いてあって、てっきり宗教のチラシかと思ったら、振り込め詐欺のチラシであり、その下には振り込め詐欺の常套句が3行書かれていた。私はその3行を一瞬しか見なかったので、ここでその常套句を紹介することはできない。
私はYという小説家の評価を、自分なりにまとめて美容師に話したのだが、それはその場で考えて喋ったことで、私自身も喋りながら、その声は私の耳にも届くので、私は私の話している内容になるほどと思った。私は美容師には、社会性はないと言ったが、実は東日本大震災を彷彿させる話もあったことを、帰り道で思い出した。それは具体的にどこの街とかマグニチュードいくつとか書かれていなかったが、読んだ人は自然と東日本大震災を連想するだろう。しかしそれは表題作ではないので、私は美容師に対する誠意を欠いたことにはならないと、私独特の論理で自分を納得させた。
そのあと私は、文章とは考えて書くものではないとか、少なくとも考えて"から"書くものではないとか、そういうことを考え、そのことをDさんにメールで知らせようかと思ったが、こうして書いてみると、微妙にニュアンスが違うというか、なんだか平凡な感じがして、私はメールを書く気が萎えた。
「AKBより不細工なのにどうしてこんなに売れてるの?」
と言っていた。