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頭と体を洗った後に、シャワーで流してから髭を剃り、私は大してヒゲは濃くないので、こうして前日の夜に剃るのです。そして、シェービングクリームも流して、湯船に浸かると、思いのほかぬるく、しかしまだまだ秋だから、がんがん沸かすのもどうかと思い、我慢することにした。少しぼうっとしていると、実は私はそのとき初めて気づいたのですが、目の前にはお風呂のマットがあって、マットは裏面をこちらにむけ、ぼつぼつしていて、それを眺めているとぼつぼつのデコボコが曖昧になって、外国の家の屋根のように見えてきました。外国の家の屋根は赤とかオレンジ色ですが、マットは水色と緑の中間のような色だから、屋根を連想するのには無理があるのですが、形がすべてを支配していました。それから私は目の焦点を自在にずらすことができるので、わざとずらして遊んでいると、あるぼつぼつが、隣のぼつぼつと重なり、そうなるとぼつぼつがさらに立体的になって面白い。
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それから私は、外国について考え、世の中には実にたくさんの外国というものが存在するが、実在するのは一体いくつくらいなのだろうか、と考えてみることにしました。アメリカはあるでしょうが、アルメニアはないでしょう。つまり、五十音につき、ひとつしかないルールだとしたら、というこれは一種の遊びで、「い」はイラン、イラク、イスラエル、イギリス、インドネシア、インド……などなどたくさんの国があって、その中からひとつだけ選んで、あとは架空の国として扱うのです。
そんな風な遊びができるのは、私が外国に行ったのは一度きりで、そのときはしかもただのグアムで、あまり外国という感じがしなかった。夕飯を食べているときに、喉が渇いたので、若い外国の顔立ちのウェイターに
「ウォーター、プリーズ」
と声をかけたら、彼は非常に困惑した顔をして、どこかへ行ってしまったので、私は他のスタッフを探さなければなりませんでした。私たちはホテルの32階の部屋で、ベランダに出ると、たしかにそこは32階だという感じがしました。海がとてもきれいだった。
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