意味をあたえる

文章としかいいようがない fktack@yahoo.co.jp

頭を下げるべきはこちらだ

私は昔コンビニでアルバイトをしていたことがあり、そこはオーナーがとてもやる気のない店で、接客の指導も「いらっしゃいませ」「ありがとうございました」を言え、と初日に言われたくらいで、あとは何も言われなかった。だから、当時は自覚はなかったが、客からしたらかなり態度の悪い店員に見えただろう。しかし、私としてもいくらか愛想がないことは自覚しており、私の中では、「接客よりもスピード」というスローガンが、誰に言われたわけでもないのに掲げられており、私はレジ打ちや袋詰めは、とにかくモタモタしないように心がけた。コンビニなんて自動販売機のようなもの、という考えがあったからだ。

しかし今の通勤路には何軒かのコンビニがあるが、結局1番よく立ち寄るのは接客態度の良い店だ。私は自分がバイトをしていた当時の仲間とたまに会って飲んだりするが、と言ってももう1年以上会っていないが、そこで必ず、
「あそこでバイトしてたおかげで、随分接客態度の悪い店員にも寛容になったよね」
と言い合っていたが、それは建前というか、やはり態度が悪いとカチンときて、「君、相当態度悪いね」
と喉まででかかったことが、何度かある。しかしその度に自分の当時の接客態度を思い出し、言葉を飲み込み、頭を下げるべきはこちらなのだ、と言い聞かせている。そもそもコンビニエンスストアというところで、接客を求める時点でズレている。彼らが時給700円とか、800円で文句を言わずに働いているおかげで、私たちは昼夜問わず安く商品を手に入れることができるのだ。彼らの給料が安いのは、経営者が搾取しているからだ、という考えもあるし、それは間違っていないと思うが、私たち消費者だって同じように搾取している。そして搾取したぶん、今度はこちらも搾取される。

だからコンビニに限らず、飲食店でもなんでも、とても安いお店が増えたが、そういう看板を見るたびに、これからも私たちの生活はどんどん苦しくなっていくんだろうな、と空しくなる。少しでも目立とうとする、ぴかぴかの派手な看板を見かけると、うんざりとした気持ちになる。だからもっと高いお店でどんどん散財しなきゃ! と私は度々思うのだが、資本主義? 拝金主義? の洗脳は想像以上に根が深く、私はなかなか思い切ってお金を使えない。妻はそういう自覚すらない。