はじまりはじまり。
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むかしむかし、あるところに、芝刈り機と洗濯機が住んでいた。芝刈り機はおじいさんに山狩りに、洗濯機は桃におばあさん丸洗いに出かけた。
洗濯機がおばあさんを洗ってると、桃から一本の川が流れてきた。洗濯機がそのまま川を持ち帰り、止水工事を施すと、中から男の赤ん坊が出てきた。2人は川から生まれたので、赤ん坊に川野太郎と名付けた。
♪メンメンメガネはよいメガネ
♪真ん中通るは中央線
♪びーくびっくびっくビックカ・メ・ラ!!
川野太郎はいつの間にかヨドバシカメラとビックカメラにも転職していた。さくらやは爆発した。
あるとき川野太郎はきびだんごを退治すると言い出し、洗濯機と芝刈り機に鬼を作ってもらった。鬼は脱水機能と、400エーカーの土地を所持していた。川野太郎は腰から鬼を下げていると、向こうから居ぬと去ると生地がやってきて、お供になった。しかし居ぬと去るは早々に存在を否定された。生地はパイ生地だった。
きびだんごは海に浮かんでいたが、防腐剤が海に流れ出したので、海の魚は全部死んだ。川野太郎はさっそく公害訴訟の準備を行ったが、離婚沙汰でそれどころではなくなった。鬼は自分の庭を脱水することに忙しかった。パイ生地は、若い頃はリンゴだのカスタードを包むことを夢見ていたが、いつしかその夢は色褪せ、窓辺でロッキンチェアに揺られながら、ぼんやりすることが多くなった。
きびだんごは塩水でだいぶふやけた。
そのとき空がぱかっと割れ、中から光につつまれたオルケスタ・デ・ラ・ルスの面々が現れ、物語を収束させてくれた。
まずきびだんごは天然素材で作り直されたので、鳥についばまれてなくなり、パイ生地は存在しなかったはずの居ぬと去るを包んで生ゴミに出された。鬼は土地を悪徳不動産に騙し取られ、川野太郎の慰謝料は小国の国家予算に相当した。芝刈り機と洗濯機は保証期間が切れ、その役目を静かに終わらせるのであった。
めでたしめでたし。