意味をあたえる

文章としかいいようがない fktack@yahoo.co.jp

仮面

昨日の文章の中で、電車に乗っている私のAndroid端末を除きこむ吹き出物だらけの男、というのがあったが、あれは私だったのかもしれない。

というのが、私は小学5年のときから、顔中にニキビができ、
「ちゃんと顔を洗え」
「朝いちばんに洗え」
クレアラシルを塗れ」
などとさんざん言われ、そのときはクレアラシルのCMがガンガン流れていた当時で、私は母にクレアラシルを買ってくれとせがんだら、母はクレアラシルフェイスウォッシュを買ってきた。こちらは洗顔用なのである。私はまあそれでもいいかと思い、しばらく使っていたが、しかしちっとも治らないので、やっぱりクレアラシルがいいと母に頼んだ。それで、クレアラシルは白色タイプと肌色タイプがあり、なぜ私がそんなに詳しいのかと言えば、どちらも持っていたからである。そして、もう当時の私のニキビは顔中にあったから、肌にすりこむように塗り、しかしほとんど効果はなかった。

それから中学になって、私もだんだんとニキビがおの私にも慣れ、周りにもニキビのある人が増えたから、あまり居心地が悪くもなかった。そうしたらある時私の目に物もらいができ、放っておけば治るかと思ったら、眼医者に行ったら直接とると言われ、目をつむっていたら、まぶたをびろんと反転させられて、メスでゴリゴリと物もらいを削り始めた。

そのときの私は、それだけが唯一の権利だと言わんばかりに、手にびっしりと汗をかき、目は強制的に開かされているが、少なくとも治療していない側はぎゅっとつぶり、何も見ないように注意した。今となれば、どちらの目が治療の目だったか思い出せない。

そういう状況の中で、医師はとつぜん、
「すごいニキビだな、皮膚科行きなさい。あとチョコラBB飲め」
と言い出し、私は何日かしてから皮膚科は行った。そこで近所に住む友達と偶然会ったので理由を聞いたら、
「君の顔のやつが、背中にできちゃって」と説明され、私は背中くらいで来るなよ、と思った。皮膚科の効果はあったか忘れたが、毎回ひんやりとした薬を塗られたがやはり劇的な変化もなかったから、やがて飽きて行かなくなった。チョコラBBはしつこく飲み続け、黄色いおしっこがでた。

そんな風だったが、高校に通うくらいになると、嘘みたいに治ってしまった。痕もほとんど残ることなく、脂っぽかった肌も、いつのまにか冬場は乾燥するようになった。だから、ニキビのない人生の方が長いから、やがてそんな時代のことは忘れ、今日久しぶりに思い出して顔を当時のように撫でてみたら、ざらざらしていた。昔はもっとぼこぼこしていた気がするが、そういう感覚はほとんど覚えていない。遠ざかる過去は、夢とほとんど見分けがつかなり、ぼやける。