意味をあたえる

文章としかいいようがない fktack@yahoo.co.jp

糸の切れた凧

ぶらぶらと、出かける用事があったので車のエンジンをかけ、そうすると私の車のそばに義父が鋸を持って立っていた。
「おはようございます」
私はその日初めて義父と顔を合わせたのでまずは挨拶をし、それから車に乗り込んだ。鋸には触れなかった。

ブーン。

一昨日に借りたソニーローリンズを聞きながら、サックスの音が心地よく、さらには途中でコーヒーを買い、私は気分が良かった。単に銀行にお金を預けに行くだけの話だが、銀行があと4、5キロ離れてもいいくらいの気持ちだった。

M銀行には、以前ひとりお高くとまった取っつきにくい女の行員がいたが、私が転職をし、しばらく来なくなったらもういなくなった。その女の店員はひとりだけ私服なので、だから取っつきにくいと感じたのかもしれない。不愉快な目にあったというエピソードはない。銀行は、最前列には窓口の人が並ぶが、そのすぐ後ろに、ひとり、さらに奥とのデスクとつなぐ役割の人が座っている。サッカーで言うとMF、二列目ということであるが、その人はエース、というほどではなかったが、最前列の人たちよりかは、立場のある人のように見えた。ただし、その人の容姿は、映画「リロアンドスティッチ」のスティッチを誘拐しにくる宇宙人の目が多い方に似ていて、あまり運動するようには見えなかった。私は以前の職場のときそのに、
「フロッピーなんですけど、もう1日早く持ってこれますかね?」
と言われたことがある。私がM銀行の担当に変わってすぐのときだ。本当は三日前が期限なのだが、前の人はあまり守らなかったらしい。私はその頃はまだ若かったから、三日前に持って行った。すると、今度は女の行員(私服)に
「本来は三日前、ではなく、三、営業日前なんです」
と注意された。三、で区切った。私はそもそもどのルールが本当なのか知らないから、言われた通りにするしかなかった。以前の人は、
「んなもん、聞かなくていいんだよ」
と言っていたが、そういう感じだったから、身を滅ぼしたんじゃないか、とも思った。

M銀行から帰ると家の前には知らない車が停まっていて駐車場を塞いでいたので、私は家の前を素通りして、車を停め、今ここまで書いてきた。糸の切れた凧、とは私の今の状況を指す。

私は書き出すまではまったく違うことを考え、書こうと思っていたが、書いたらM銀行のことを延々と書いた。文章は書き始めるまでわからない。