意味をあたえる

文章としかいいようがない fktack@yahoo.co.jp

石、岩

これは一昨日の話であるが、私とその家族は埼玉県にある博物館へ行った。家族とは、妻とネモ氏である。志津は留守番である。留守番、というとまるで何かの罰のような言葉の響きがあるが、そうだとすると、留守番しているのは私たちの方である。ちなみに私たちの地方では「留守居」と言ったりする。

ところで、「しりとり」というゲームに興じているとき、「る」で終わったときにはたいていは「ルビー」なんて答えたりするが、一度出た単語は二度と使えない縛りだったりすると、二回目は「留守番電話」と大抵は言う。しかし、留守番電話が登場したのは80年代で、それじゃあそれ以前は、「ルビー」しかなかったのか。「る」の第Ⅱ候補として頭を捻るとき、「留守番」という言葉が沸き上がるように出てくるが、残念ながら「ん」がついて負ける。「る・す・ば......」の辺りでそのことに気づいて、急拵えであわてて「電話」と付け足すのである。誰でもそんな経験があるのではないだろうか? ちなみに他の「る」では、ルーマニアとルールがある。ルールはドラクエで言うと、マホカンタのような効果がある。そのまま跳ね返せるが、もしも相手が奥の手を隠していたら、こちらが大ダメージを食らう。それとマホトーンという呪文もあるが、それはしりとりだと何になるか。それは「カッター」などの伸ばし棒で終わる言葉ではないだろうか。「カッター」の次は、「た」なのか「あ」なのかは、しりとりではいつも揉める一場面である。あと、てんてんや、まる、を次にちゃんと引き継ぐかどうかも、始める前にきちんと意見を合わせた方が良い。

それで、私たちは特にしりとりなんかせずに博物館まで来たのだが、博物館までは片道一時間とかかかるので、そういうなかなか着かない気分を味あわせたくて、私はここまでだらだらと書いた。私たちは二時頃に家を出て、着いたのは三時とかで、そうしたら、博物館は四時半で閉館で、ちょっとしかいられなかった。ビバ・無計画家族といったところか。しかし、館内はとにかく寒くて仕方なく、それは剥製とかあるから冷房とか入れているせいかと、思ったが、外に出ると、やっぱり寒かったから気候だった。私は寒かったから途中から頭も痛くなって早く帰りたかったので、閉館時間が来てほっとした。外に出ると、散歩道のようなのがあって、そこを歩いていくとメタセコイアという巨木が植えられていて、それは生きている化石らしい。私は最近は木に興味があって、それは、私の目にする風景に木がたくさん生えているからで、そういうのの名前がわからないと苛立ちを覚えたからである。私はこうして文を綴っていても、実際に言葉として出なくても、背景にはヤマモモとかクヌギとかケヤキとかが隠れているのである。時間のある人は、私の綴っている文字と文字の合間に目を凝らしてみてほしい。しかし、私自身がそれを捉えられずイライラして、だからこの前図鑑を買ったのである。この図鑑は大変親切で、樹皮検索や葉検索をかけられるのである。しかし、図鑑なので重くて持ち運べないから、その場で調べられず、なんとかおぼえて帰ろうと思うが途中で忘れてしまうのである。

ところで、博物館の中でぶらぶらしていたら、知らないおじいさんが話しかけてきて、石について話し出した。奥から標本を持ってきて、
「黒い石ほど鉄分を含んでいて、磁石がくっつく」
と教えてくれた。ぼつぼつ穴があいているのは、中に空気が入っていたらしい。名前を玄武岩と言う。すっかりネモちゃんはそれを欲しがり、
「どこにありますか?」
と尋ねると、埼玉県にはあまりないらしい。埼玉県には、石灰石が多く、石灰石は白くて磁石にはくっつかない。それと、レンガやコンクリートを石っぽく加工したものがあり、これらと石を見分ける方法は、酸をかけると、偽物はたちまち溶けてしまうようだ。おじいさんは、私の高校の頃の担任になんとなく似ていた。しかし、私はこの「似ていた」という感覚を疑わしく思い、勝手に懐かしさに浸りたかっただけでは? と冷酷に分析した。担任は私が卒業した翌年に定年を迎え、私はもうそれから20年近く経っているから、もうこの世にいないか、いたってヨボヨボだろう。

私はすっかり石に魅せられて、石なら、植物よりもずっと少ないから、おぼえるのは容易だし、なにより毎日踏みしめているものだから、私の文章にも少しは石も含まれているからである。しかし、そのあとネットを調べると、
火山岩、火成岩、火砕岩」
の区別がもうつかなくなり、おまけに受験生向けのサイトを開いてしまったのか、
「これは関係ない」とか、
「これだけおぼえればOK」
みたいな文言ばかりが目につき、受験生には、主体性のかけらもないんだな、と思った。