意味をあたえる

文章としかいいようがない fktack@yahoo.co.jp

短距離走

昨日の記事で三森さんがコメントをくださり、そこで「弓岡さんの文章は短距離走のようだ」と言われたが、短距離走、と言ったのは私の方だった。三森さんは、「テンポが早い」と言ってくださり、「二拍に四拍をつっこむようだ」と言った。それに対して私が、
「そういえばブログに関しては、短距離走のように書いている」
と返したのだった。三森さん、と書いてしまったので、大筋だけでもちゃんと書かなければならない。三森さんとは、とても文房具に詳しい人です。

二拍に四拍、とはミュージシャン用語で倍テン、といい、これは倍のテンポの略である。インポテンツではない。倍だからめっちゃ早い。元が遅い曲なら、そんなに早くなんないでしょ? と思う人もいるかもしれないが、早さとは相対的な早さだから、聴いてる方は相当早く感じる。私は昔ドラムを演奏していたから、こういうことも知っているのである。

だから、三森さんにそう言われて、
「いやいや、そこまで早くないでしょwww」
と、脳内突っ込みを私は入れたのだが、それは人の感じ方だから、わからない。ちなみに「早い曲と遅い曲は、どちらが難しいですか?」と質問されたときに「遅い曲です」と答えると通っぽい。早い方が難しそうに感じるからである。早い曲はムキになってやるとそれっぽくなる。一方遅い曲はムキになると早くなるから、心を落ち着けてやればいいと思われそうだが、それでは単にかったるい演奏になるだけである。なんでもかんでも逆にやればいい、という話ではない。遅い演奏は、遅く手を動かしているわけではなく、本人の手は割と早く動いている。腕の移動距離や回転半径を大きくすれば、必然的に早くなるのだが、それは結果的にそうなっただけで、最初から「バラードはオーバーアクションで」となるわけではない。本当は早くも遅くもない、「ただのそのテンポ」で動いているのだが。

私がドラムのレッスンを受けているときは、左右の手足で、それぞれにあらゆるテンポを叩き込まれた。テンポは普通四分音符を1分間にいくつ打つか、で計る。流行りのR&Bなら90から110くらい。90以下がだいたいバラードで、ロックの早い曲は180から200で、BUMP OF CHICKENの「天体観測」も180だったと思う。遅かろうが早かろうが、いつでも同じ動きをできるようにするのである。ロックドラムは右手が主役で左足はほとんど出番がない。ジャズも右手が主役だが、左足もものすごく大事だ。私は先生がジャズの人だったから、ジャズに興味を持ち、基本のレガートを教えてもらったら、
「左足が弱すぎる。まず自分のハイハットを買いなさい。それで、ナイター中継でも見ながら筋力をあげるように」
と指導された。ナイター中継は暇つぶしになればなんでも良かった。先生も特にプロ野球が好きというわけではない。先生は山口県出身だから、ひいきの球団とかないのだ。母親がフグの調理師免許を持っていて、父親が釣ってきたフグを、子供の頃から食べていた。だからフグが高級食材だとは思わなかった、と話していた。山口県はそういう県民性なのだ。秘密の県民ショーでもやりそうだが、みのもんたが嫌な顔をするからやらない。みのもんたはもう出てないんだっけ? どちらにせよ秘密の県民ショーなんかで取り上げたら、
「俺は山口県民だけど、フグなんか一度も食べたことがない。食べるのは沿岸部の人だけだ」
と憤慨する人も出てくるだろう。そういう番組なのだ。しかしなんにせよ、先生の実家は今は新潟県に引っ越してしまい、もうフグは手軽に食べられない。とれるのはコシヒカリばかりで、コシヒカリを調理するのに免許はいらない。母親の調理師免許は、仏壇の引き出しの奥でホコリをかぶっている。先生も実家への道がわからない。

私の通った教室には、一通りの楽器の先生が揃っていて、ギターの先生はサッカーに詳しかった。ギターの先生は2ちゃんねるのギター板の常連でもあり、結構辛辣なことを書き込んでいた。


※小説「余生」第5回を更新しました。
余生(5) - 余生