意味をあたえる

文章としかいいようがない fktack@yahoo.co.jp

偉い人

本社から偉い人がくるというので飯でも食いにいこうという話になって、私の上司が言うにはそこまで偉くない人だから別に来れなきゃ来なくてもいいよ、みたいなノリで、しかしだからと言ってその日にいきなり言い出すのはいかがなものか。私は平だから、誰だって偉いのである。私が
「ぉえ? 今日ですか?」
と私が驚いて見せると、
「じゃあ明日でもいいよ」
となんだろう、立ちはだかる壁がふにゃふにゃで結果なんの足がかりにもならない的な。中途半端な譲歩で罪悪感の軽減をはかるのはやめてほしい。そうして私が
「明日ならなんとか」
と言ってしまうと結局私のわがまま、という体裁になってしまうのでお得意の
「みんなに聞いています」
でひとまず難を逃れることにした。というのは、結局私の独り相撲で、言葉通りに受け取れば、
「ちょっと都合が」
と断ればいいだけの話だ。しかし私はそこまでこの上司という人間を嫌ってはいないので、行く方向の気持ちが強かった。迷ってしまったときは、相手の好き嫌いで決めると良い。

それで結局行くのは私と後輩だけだったのだが、後輩は前の段落で私が書いたことを私自身に感じたのかもしれない。それで行けない人の断り方に、その人の人間性が出るので、そのことを以下に書きたい。

一番良い断り方は、やはりシンプルに
「予定があるから」
「興味ないから」
というやつで、逆は
「自分はそういうのは出ない主義だから」
という、ただのYES/NOの話に主義主張を盛り込んでくるパターンで、これは取りようによっては、こんな誘いをかけてくる私を非難しているのである。だけれども誘わなかったら誘わなかったであとから拗ねるのもこのタイプなので、話は一応しなければならない。前の前の仕事あたりのときは、そういうのが異様に求められる職種で、公私問わず、何かの報告事項を行う順番を間違えると、大問題に発展するような職場で、大問題というか、たいていすっ飛ばされた人が拗ねて、こちらは平謝りをしなければならない。時には上司を引っ張り出して、その人が犬を飼っていれば、
「立派なワンチャンですね」
とかおべっかを使わなければならない。そこの家はたしか警察犬みたいなのを飼っていた。だから私は今もそういうのに神経質なのかもしれない。

まあそれでそういうのに参加しない主義の人は、それで
「失礼しました」
と私は引っ込むのだが、なぜかあとから
「お金がないんだよね」
「今日子供が歯医者で」
とか、追加の不参加理由を述べてくる。私が告げ口すると思っているのである。私は告げ口なんかしない。それは私が義理堅いとかそういうのではなく、話題に出せば結果的にその人の名誉を守ることになると考えるからだ。だから逆に言えばこの人は、本当のところを言えば参加したくてたまらないのである。もっと言えば、余計な金は使いたくはないが、ぜひ自分の話をして、擬似的に参加させてほしい、という意なのである。

だから私はめんどくせえな、と思った。

酒は飲まないが居酒屋に行き、上司チーム、平チームで分かれて座るとなんとなく無礼講モードになり、
「何か言いたいことがあれば。今後に生かしたい」
と偉い人は言ってきた。その前にこの偉い人はぼそぼそと喋るタイプで、私もあまり耳が良くなく、なにか熱くなった際に、
「俺は会社を変えたい」
と言ったのだが、
「俺は会社をかえしたい」
に聞こえ、土にでも返すのかと思い、なんだか「もののけ姫」の世界みたいだな、と思った。それで言いたいことは、と言われたので私は
「毎日の報告書のフォームですが、カーソルを合わせると自動的に半角英数になり、それが我慢できません。あそこは日本語をうつところなので、全角にしてください」
と、かなり熱く要望したら「は?」みたいな顔をされた。もちろん私もいくらかふざけていた。