意味をあたえる

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フランツ・カフカ「審判」

私は少し前にフランツ・カフカ「審判」を読んでいたのだが、途中で投げた。投げた部分といのが、笞刑吏があるときヨーゼフ・K会社の倉庫みたいなところのドアを開けるといて、そこで序盤にヨーゼフ・Kにいろいろ嫌がらせをした裁判所だか役所の回し者の男二人組がいたのだが、彼らは上半身裸にされてひたすら鞭でぶたれているというシーンである。私はこのシーンが割と好きで、もちろんそれは序盤に主人公に色々嫌みだとか言ってたやつが、鞭打ちされてすかっとする、という意味もあるが、この二人組が私の中でスーパーマリオのマリオとルイージのイメージになっていて、二人組の軽はずみなところとかが、亀を踏んだり茸を食ったりと、ゆるく旅を続ける彼らに重なるのである。ちなみにカフカの「城」にも登場し、そこで私は初めて
「ああ、マリオとルイージにそっくりだな」
と思うのである。「城」では女が登場してその女をマリオとルイージが口説いたりして、いろいろ主人公の足を引っ張るのである。私はそういうシーンが楽しかった。

それでカフカの短編集の中にもこの二人が登場する話があってそれはタイトルを忘れたが、たしか「独身もののブルームフェルト」というタイトルだったと思う。ブルームフェルトという独身者の話であった。ブルームフェルトは40代くらいで、私のイメージでは角野卓造であった。このイメージは読者のために私が今イメージしたものである。それが一応中間管理職みたいな仕事をしていて、それの部下だか秘書がマリオとルイージなのだが、これらが全く仕事ができない。そのくせ、清掃人のおじいさんに悪意を持って絡んだりするので手に負えないのである。そういうところがマリオやルイージにそっくりだった。しかし、よく考えるとそこに出てくるのは1人だったかもしれない。

私は少し前にこのシーンが読みたいと思って、本棚からカフカ短編集を取り出してページをめくったが、私はどういうわけか頭から読み出してしまった。短編だから、読んでいるうちに目的のシーンにたどり着き、それならば「ここでもない、あそこでもない」とページを行ったりきたりするよりも合理的と判断したのである。ところで私はよくブログに本の面白かった部分を引用したりしますが、そのときうっかり付箋などを貼り忘れるとやはり行ったり来たりする。私の「ここいらではないか」はことごとく外れ、私はほんとうにこういうのを探すのが下手なのである。こういうとき、私はよく
「このまま見つからなければ愉快だな」
なんて思う。見つからなければ、私の創作であり、つまり私は読みながら読む行為とはぜんぜん関係ない脳の回路を動かしていたことになるので、そういうのが愉快なのだ。しかしそんなことを考え始めると見つかる。

「独身もののブルームフェルト」は、最初自分の家に帰ってくると二つのスーパーボールみたいなのがぴょんぴょん飛び跳ねながらブルームフェルトを出迎え、それらは生き物のように動いていて、ブルームフェルトは面食らう。つかまえようとしても捕まらないし、一体なんなんだ!? という感じに夜が明ける。それでなんやかんやあって後半にはこの奇妙なボールは一切登場せず、あとはひたすらマリオが清掃人に絡んでブルームフェルトがうんざりして話は終わる。私はもうボールがぴょんぴょん元気に跳ね回るあたりで眠くなりその日は寝たので、ボールとマリオのつなぎとか、全然忘れたが、ボールはたしか近所の貧乏な子供にあげちゃったとかだった気がするが違う気もする。とにかく前半には後半の気配がなく、後半になると前半のことを一切忘れちゃってる感じがとても面白い。