意味をあたえる

文章としかいいようがない fktack@yahoo.co.jp

サンバルカン

日曜に近所のワークマンで靴下を買ったら、風が強かった。ワークマンは近所と書いたばかりだが国道ぞいにあり、国道には中央分離帯があるので、いったん裏道に行って大きく迂回しなければ店にははいれなかった。私の家は国道からはいくらか離れていた。私は仕事用の靴下はワークマンで買うと決めており、その辺りの詳細は私のもうひとつのブログで連載した「余生」という小説に書いてあるので、興味があれば読んでみてください。私はワークマンに来るのはそれほど久しぶりという感覚はなかったが、店にはいるとカウンターの位置が変わっていてびびった。あと、いつもの靴下が980円から1200円に値上がりしていた。値下げのときは
「下げました」
と宣伝するのに、値上げはこっそりやるから、端からこの価格だったような気がしてしまう。しかし、小説の中でH・Kくんが、
「土踏まずがきゅっと締まった靴下で980円は破格ですよ」
と言っていたから、980円だった。H・Kくんは、980円を「980円」と表明するタイプだった。私は「千円くらい」と言う。

カウンターの中にいる、丸っこい中年の女性店員は、前のカウンターのときにもいた人だったが、私はそのときあらためて女が斜視だと気づいた。どうして今まで気がつかなかったのだろうか。それとも私が最後に来た後に斜視になったのだろうか。男が店の奥の方で電話をしている。男とは客だ。おそらく、私が以前合羽を買ったゾーンにいる。それももう場所が変わってしまったかもしれないが。

私は以前とは違う靴下を選んだ。五本指socksではない。そうしたら、それは三足一組のやつで、色はイエロー、ブルー、レッドだったから、
サンバルカンみたい」
と私は思った。黄色がクリーム色に近い色で、あとところどころに黒いラインが入っていたから、なおさら戦隊っぽかった。サンバルカンとは、私が物心ついて最初に観た戦隊ものの名称である。「サン」が三と太陽(SUN)にかかっている。文字通り三人組で、イエローが陸、赤が空、青が海の象徴で自衛隊のようであった。そう考えると、戦隊ものは三人組のほうが理にかなっている気がするが、どうして、サンバルカン以外の戦隊ものは、私の知る限りみんな五人組である。弟がやはり物心ついたころ、三人組の戦隊もあったが、途中から黒と緑が合流した。あとそのときは青が女だった。女は変身前はいつも青いジャンパーと白いミニスカートを着用していた。ミニスカートを履きながら女はなかなか際どいポーズをきめることもあり、私はもしカメラの位置がずれてくれれば、下着が見えるのに、といつも思っていた。スタッフの中には下着が丸見えの人もいただろう。そういう、場所によっては無防備なのが、私を興奮させた。

それで私はしばらく女性器に思いを馳せていたが、そうしたら山本晋也監督のことを思い出した。山本晋也監督は昔欽ちゃんの仮装大賞の審査員をやっていたが、あるとき、出し物をする人が子供のときがあって、子供がひとりでなにをやるのかと思ったら、卵のプラスチックのケースを用意し、それで顔を隠し、目撃者の証言みたいなことを言い出した。プラスチックは光を屈折させて向こう側がぼやける。それがモザイクっぽくて、出し物のタイトルも「モザイク」で、審査員は絶賛した。合格点に達すると端から萩本欽一が出てきて、なんやかんや言い、山本晋也監督にコメントを求めた。すると山本は、
「おじさんはね、君が手に持っているものを撲滅したいとがんばっているんだよ」
と言い、私は初めて山本晋也監督がなんの監督なのか知った。