意味をあたえる

文章としかいいようがない fktack@yahoo.co.jp

寝ぐせ

私は子供のころから朝起きると寝ぐせが立っていることが多い。寝ぐせというのは髪がある程度伸びた時点でいちばん立ちやすく、さらに伸びると重くなるからあまり立たなくなる。髪質や量の問題もあるだろう。私は髪の量が多く、髪質はやわらかい。私はいまだに髪質のかたいやわらかいが、どっちがどっちだかわからないから比喩を用いると、粘土のような髪質だ。手でぐしゃっとつかむと、何秒かはその形を維持する。寝ぐせは一晩押さえられているわけだから、ちょっとやそっとじゃ直らないのである。加えて私は後頭部が丸くなっているから、寝ぐせも目立つ。

小学校のころは寝ぐせ直しだのを使い、その上に帽子をかぶっていたが、あるとき寝ぐせ直しが切れてしまい。父親が髪につけるようなのを頭にどぼどぼかけたら、すごいにおいがした。やばいと思って水をかけ、その上に帽子をかぶって登校した。そして学校に到着し、帽子を取ったら周りの人が
「くせえ、くせえ」
と騒ぎ始めた。奇しくもその日は土曜参観の日で朝から親たちが見にくることになっていたので、みんなは私が特別なおしゃれをしてきたのだと思い、冷やかし始めた。私はそのころには、そういう行為をかわす技術も身につけていたので、
「まあ、そんなところだよ」
と平常運転のふりをした。もちろん、心中は穏やかではない。奇しくも土曜参観の日だったが、土曜参観は一時間で終わってしまうから助かった。給食なんかで誰かが
「くさくては食えねえよ」
とか言い出したら、また新たなかわし文句を考えなければならなかったからだ。「たまには刑務所に入ったつもりで「くさい飯」でも食えよ」とか言えば良かったか。とにかく、怒ったり泣いたりしてはいけない。

そうして、その日の出来事は今でも覚えているくらい恥ずかしい出来事だったが、しかし、そうやって冷やかした連中の中に、そのことを覚えている人はひとりもいないんだろうな、と思った。

どうして寝ぐせのことを書いたのかと補足すると、朝にコンビニによったら、髪が逆立って地肌が露出するくらいの人が、ピザパンを頬張りながら私の目の前を歩いていったからである。ピザはチーズの部分から湯気が立っていて、旨そうだった。