意味をあたえる

文章としかいいようがない fktack@yahoo.co.jp

みすず学苑の広告は、普通の人がまともでないことをやるのではなく、普通でない人がまともなことをやってるっぽくて好ましい

朝から電車に乗ったら酔った。というより妻の車に乗ったときから酔った。あわてて家を出たせいだ。急いで革靴に防水スプレーをかけた。水のペットボトルを持って行こうと思って忘れた。私は常温で飲みたい。

途中のドアのところの広告にみすず学苑の広告が貼られていて、どうしてこのタイプの広告が他にないのか不思議に思った。何種類かの受験科目をシンボライズしたキャラクターが大小並べられ、中心はヤマトタ毛深ノミコトであった。これは何の教科の守護神ではない。あとは国gogogoというのがいた。これは国語の守護神である。理科は理科ちゃんだった。あとは忘れた。例えば世の中には笑ってしまう広告がたくさんあるが、これは笑う必要がないから笑顔を他人に見られる心配がなかった。笑顔は他人に見せるためのもので、そうでないと気持ち悪がられた。

みすず学苑はCMでよく「怒涛の合格!」と絶叫しているが、まさに怒涛とはこういうことだと広告で示されていた。怒涛というのは川の氾濫だとか溶岩が山の斜面を下りていく感じだ。例えば変なことをしてやろう、おかしなことをしてやろう、というのは山の斜面の雑草を刈り取って道にしますよ、ただしその道はくねくねしていて変ですよ、という具合であり、結局は洗練された形に近づいていくのだが、怒涛とはその逆の混沌であり、頭のおかしな人が突然自然の保護を訴え出すみたいな怖さがある。

世の中にこうした意味の分からないものがもっと増えてほしい。あと今日は汚い工場みたいなところに行った。私がそこの作業員に質問をすると会議室に作業員は二人いて、ひとりは爺さんでひとりは私と同じくらいで、爺さんは「終業5分前には必ず機械のチェックを欠かしませんみたいなことを繰り返し言い、その度に私が苦笑した。私とは、私と同じくらいの年齢の私でない人だ。私はそのあと、最初からいたよくわからない人が
「写真を撮りましょう」
と言い出してみんなで、がやがやと机をどけながら並ぶんだとき、
「俺は作業着なので写りたくない」
と言い出したので、私は
「自分もいつもは同じ格好ですよ」
とにこやかに言った。